22-23 イ・ヘイン

2005年4月16日生まれ

シニア3シーズン目

シーズン獲得賞金:$74,000

世界ランキング:4位

シーズンランキング:6位

シーズンベストスコア 225.47(2位) ワールドチームトロフィー

ショートプログラムシーズンベスト 76.90 ワールドチームトロフィー

フリーシーズンベスト 148.57 ワールドチームトロフィー

ショートプログラム楽曲:Storm

フリープログラム楽曲:オペラ座の怪人より

スピンレベル4率 43/48 = 89.6%(国際大会 37/42 = 88.1%)

ステップレベル4率 12/16 = 75.0%(国際大会 10/14 = 71.4%)

スピンオールレベル4 4/8 (国際大会 3/7)

スピンステップオールレベル 2/8(国際大会 1/7)

ジャンプ要素回転不足率 8/80 = 10.0%(国際大会 7/70 = 10.0%)

スピンステップオールレベル4 ジャンプ回転不足なし 1/8(国際大会1/7)

 

○22-23シーズンの戦績

Grade Event Pl Total SP FS
CS Ondrej Nepela Memorial 3 164.88 58.06 106.82
CS Finlandia Trophy 4 195.72 66.00 129.72
GP Skate America 4 179.50 66.24 113.26
GP Grand Prix de France 4 193.49 62.77 130.72
NC Korean Championships 3 205.31 70.75 134.56
4CC Four Continents 1 210.84 69.13 141.71
WC World Championships 2 220.94 73.62 147.32
WT World Team Trophy 1 225.47 76.90 148.57

イ・ヘイン選手はシニア3シーズン目。昨シーズン4大陸2位、世界選手権7位の実績をもち今シーズンは最初から有力選手という位置づけでのシーズンインです。

初戦はチャレンジャーシリーズネペラメモリアル。ショートフリー共にジャンプが全く決まらず164.88 2戦目は2週連続でフィンランディア杯に出ると、まだジャンプがしっかりは決まり切らないながらも195.72までスコアを伸ばしてきました。

グランプリシリーズはファイナル候補の1人として出場してきますが、アメリカ、フランス、ともに4位。初ファイナル、初表彰台はなりませんでした。

韓国勢はナショナル選手権が大問題。激烈な代表争いがあります。世界選手権の枠は3つ。4年連続表彰台ながら優勝はまだないイ・ヘイン選手。ショートは70点台に乗せて3位発進。フリーはジャンプが微妙に決まり切らずのq3つ!1つという厳しい試合展開でしたが何とか我慢して134.56 総合3位と5年連続表彰台を確保、無事に4大陸及び世界選手権の代表を確保しました。

昨シーズン2位だった4大陸選手権。ショートでやはりジャンプがクリーンに入らずq1つ!1つ 69.13 悪くないけど6位スタート。ただ、首位とは3.71差という僅差。ある意味ではいい位置に付けたのかもしれません。迎えたフリーは最終グループ1番滑走。ここで全要素プラス評価のクリーンシートで141.71 トータル210.84と210点に乗せて残りを待ちます。すると上位はジャンプを決めきれず最終的にそのまま勝ち残り、韓国勢としてはキムヨナさん以来2人目のチャンピオンシップのタイトルを手に入れました。

さらにもう1ランク上の試合、世界選手権はこれで3年連続出場になります。4大陸チャンピオンとして表彰台候補として臨むことになりました。ショートは73.62とパーソナルベスト更新で2位につけます。ただし4位まで0.49差、5位まで1.68差という僅差。フリーは最後から2番目。表彰台確定には134.09が必要、2位以内確定には136.81が必要、これはしっかり滑れば行けます、という中でのオペラ座の怪人。ルッツで一つqが付くだけの素晴らしいクリスティーヌ。147.32までスコアを伸ばし220.94と220点台に乗せ、展開次第では優勝も、という状況で最終滑走を待ちます。結局あと一歩は及びませんでしたが、世界選手権2位表彰台。これもキムヨナさん以来韓国勢10年ぶりとなりました。

おまけで今回は国別対抗戦に韓国も参加。ショートフリー共に完璧の演技で1位。韓国の総合2位に大貢献し、自身の18歳の誕生日を自身で祝う形となり、シーズンを終えました。

 

○要素別スコア

Event Total TES PCS J Base J GOE Spin Step
Ondrej Nepela Memorial 164.88 85.48 84.40 62.12 -13.08 22.63 13.81
Finlandia Trophy 195.72 100.27 96.45 63.03 -1.02 23.63 14.63
Skate America 179.50 87.36 93.14 54.17 -2.07 22.85 12.41
Grand Prix de France 193.49 99.01 96.48 58.28 3.08 23.50 14.15
Korean Championships 205.31 104.23 101.08 64.42 0.64 23.98 15.19
Four Continents 210.84 110.98 99.86 65.28 7.34 24.20 14.16
World Championships 220.94 115.04 105.90 65.28 10.09 25.21 14.46
World Team Trophy 225.47 117.11 108.36 65.28 10.39 26.10 15.34

シーズン前半は200点に届かない一方、シーズン後半はすべて200点超え。日を追うごとにスコアを上げていくという世界選手権に合わせた仕上がりになっていました。国別対抗戦の225.47は今シーズン全体で2位、ISU公認スコアでは1位になります。

技術点は世界選手権で115.04まで出しています。国別対抗戦の117.11は今シーズンのシニアでは2位、ISU公認シニアでは1位という高い評価です。

PCSは4大陸でも100点に届かないなどやや渋い評価もありましたが国別では108.36と平均9点超えまで出ました。これは今シーズン2位になります。

ジャンプの基礎点はシーズン後半3試合で65.28 つまりショートフリーで基礎点削られるミスがなかったということになりますが、これはそれほど高い値でもないです。イ・ヘイン選手も出来栄え勝負型です。

ジャンプの加点は初戦のネペラメモリアルでは-13.08というシーズンワースト13位というなかなか見ないスコアで始まりましたが、世界選手権、国別では二桁加点をもらいました。+10.39は今シーズン6位です。

スピンは23点台が標準だったところから、国別では26.10まで出ました。ここまで来るとシーズン3位の高評価です。スピンのイメージの選手ではなかったのですが。

ステップ系要素も国別で15点台まで出しました。これで今シーズン4位の評価となります。

 

○要素別偏差値

Event Total J Base J GOE Spin Step PCS
Ondrej Nepela Memorial 53.24 61.66 29.41 58.68 63.84 54.37
Finlandia Trophy 63.43 62.55 54.10 62.02 67.54 63.13
Skate America 58.07 53.90 51.95 59.41 57.54 60.72
Grand Prix de France 62.69 57.91 62.49 61.58 65.37 63.15
Korean Championships 66.60 63.90 57.50 63.19 70.06 66.49
Four Continents 68.42 64.74 71.22 63.92 65.42 65.61
World Championships 71.76 64.74 76.85 67.29 66.77 70.00
World Team Trophy 73.26 64.74 77.46 70.26 70.73 71.78

シーズン前半は偏差値60前後まででしたが後半に入って伸びてきて、世界選手権で70台に乗せました。

ジャンプの基礎点はノーミス時で64.74 60台半ばまでです。ジャンプの加点の方はネペラメモリアルで20台というすごい偏差値も見える一方、4大陸選手権以降は70台と高い偏差値になりました。最低と最高の差はイ・ヘイン選手のジャンプの加点がおそらく全選手の中で一番大きいです。

スピンは国別で70に偏差値を乗せましたが、60台前半くらいが標準です。

ステップ系要素は韓国ナショナルと国別で70に乗せましたが通常の試合では60台半ばくらいという評価でした。

PCSは世界選手権から偏差値70に。

各要素で高い評価を受けています。

 

22-23シーズン イ・ヘイン選手の要素別偏差値レーダーチャート

レーダーチャート見ると、ジャンプの加点のばらつきがすごいですが、それ以外は全体的にバランス型に見えます。全体の出来栄えで勝負するタイプ。その中で出来栄えが良いとジャンプの加点が大きく伸びるという姿です。

 

・シーズン最高の基礎点構成

○ワールドチームトロフィー ショートプログラムの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
1 2A   3.30   1.04 4.34 3.222
2 3Lz+3T   10.10   1.43 11.53 2.333
3 FCSp4   3.20   1.01 4.21 3.000
4 3F   5.83 X 1.36 7.19 2.556
5 SSp4   2.50   0.86 3.36 3.333
6 StSq4   3.90   1.62 5.52 4.111
7 CCoSp4   3.50   1.35 4.85 3.778
  TES   32.33   8.67 41.00  

基礎点32.33は韓国ナショナルと国別対抗戦で出していました。4大陸と世界選手権は31.73 ステップレベル3の分基礎点を落としていました。

ルッツからの3-3で1.1倍に単独フリップを入れると基礎点は最高で32.33 スピンに基礎点2.50のシットスピンがある分も少し基礎点が下がります。32.33はそれほど高い基礎点でもないです。ただ、それでも、全体の要素を揃えると技術点41.00という40点超えのところまで出すことができます。

この構成はGOE満点で技術点46.13になりPCSも加味すると86.13満点となります。平均GOE4.000で技術点43.37まで出ますのでPCSで37点近く出せば80点にまで乗りますが、そこまで出すのは相当厳しいです。

 

○ワールドチームトロフィー フリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
1 2A+3T   7.50   1.50 9.00 3.444
2 3Lz+3T   10.10   1.69 11.79 2.778
3 3Lo   4.90   1.33 6.23 2.667
4 3S   4.30   1.17 5.47 2.778
5 FCSp4   3.20   0.78 3.98 2.556
6 FCCoSp4   3.50   1.25 4.75 3.556
7 ChSq1   3.00   1.36 4.36 2.778
8 3Lz+2T+2Lo   9.79 X 1.26 11.05 2.000
9 3F!q ! 5.83 X -1.14 4.69 -2.000
10 2A   3.63 X 0.75 4.38 2.444
11 StSq4   3.90   1.56 5.46 4.000
12 CCoSp4   3.50   1.45 4.95 4.111
  TES   63.15   12.96 76.11  

フリーは63.15 これは昨シーズンの最高基礎点と同じです。2回飛ぶジャンプはルッツとトーループ。1.1倍には3連続が入ります。4大陸、世界選手権、国別と3試合続けてこのノーミス基礎点を並べました。坂本花織選手の最高基礎点が62.52ですのでそれを上回っています。なので後は出来栄え勝負。シーズン後半のあの出来が来期もできてくると、PCS評価も高くなっていますし、ワールド戴冠もありえる、ということになるでしょうか。

冒頭が2A+3Tと少し楽なコンビネーションで入って、次に3Lz+3Tを入れるという構成。昨シーズンは3Lz+3Tから入っていたので冒頭からプレッシャー掛けすぎない工夫なのでしょうか。今シーズンの序盤の試合では毎試合構成替えていて試行錯誤があったようですが、フランス杯以降はこの構成で落ち着いていました。冒頭を2A単独にして2A+3Tは最後に入れる、みたいなことをすると基礎点が0.42上がる、みたいなこともありますがそこでリスク負う必要もないのでしょう。

この構成はGOE満点で技術点89.60まで出ます。PCS加味して169.60満点です。平均GOE+4.000で技術点84.31 平均GOE+3.000なら技術点79.02です。+3を並べると150点台は見えます。

 

○平均GOE3.200以上

Event     Elements   Base   GOE Scores AvGOE
World Team Trophy SP 6 StSq4   3.90   1.62 5.52 4.111
World Team Trophy FS 12 CCoSp4   3.50   1.45 4.95 4.111
World Championships FS 11 StSq4   3.90   1.56 5.46 4.000
World Team Trophy FS 11 StSq4   3.90   1.56 5.46 4.000
World Championships FS 12 CCoSp4   3.50   1.40 4.90 3.889
Korean Championships FS 11 StSq4   3.90   1.56 5.46 3.857
Four Continents FS 11 StSq4   3.90   1.45 5.35 3.778
World Team Trophy SP 7 CCoSp4   3.50   1.35 4.85 3.778
Four Continents FS 12 CCoSp4   3.50   1.35 4.85 3.667
Korean Championships SP 6 StSq4   3.90   1.33 5.23 3.571
World Team Trophy FS 6 FCCoSp4   3.50   1.25 4.75 3.556
Grand Prix de France FS 1 2A+3T   7.50   1.50 9.00 3.444
World Team Trophy FS 1 2A+3T   7.50   1.50 9.00 3.444
Finlandia Trophy FS 11 StSq4   3.90   1.37 5.27 3.375
Finlandia Trophy FS 12 CCoSp4   3.50   1.17 4.67 3.375
World Championships SP 6 StSq3   3.30   1.13 4.43 3.333
Four Continents SP 6 StSq3   3.30   1.08 4.38 3.333
World Team Trophy SP 5 SSp4   2.50   0.86 3.36 3.333
Finlandia Trophy SP 7 CCoSp4   3.50   1.17 4.67 3.250
Grand Prix de France SP 1 2A   3.30   1.04 4.34 3.222
World Team Trophy SP 1 2A   3.30   1.04 4.34 3.222

平均GOEで+4.000以上は4つ、というのがまだ坂本選手との差になっています。それでも今シーズンは+3.000以上の要素がぐっと増えてきました。

評価が高いのはステップです。平均GOE+4.000以上のステップがあるのは坂本選手、ヘンドリックス選手と並んで3人だけ。今シーズン3位の高評価です。

スピンではCCoSp 足替えのコンビネーションスピンで+4超えがあります。

ジャンプは最高評価が2A+3Tの+3.444 ジャンプで+3以上がもう少し並んでくると、ノーミス勝負で坂本選手越えが見えてきそうです。

 

トリプルアクセル

Event     Elements   Base   GOE Scores AvGOE
Ondrej Nepela Memorial FS 1 3A<< F 3.30   -1.65 1.65 -5.000

実は年に1回トリプルアクセルチャレンジをするイ・ヘイン選手。昨シーズンはフランス杯でダウングレードでしたが、今シーズンはネペラメモリアルでダウングレードの転倒ということで、まだちょっと完成は遠そうでした。シーズン後半のあの完成度に、トリプルアクセルまで入ると、ちょっと手が付けられなくなるのですがそんな未来は来るでしょうか?

 

○セカンド3回転の要素

Event     Elements   Base   GOE Scores AvGOE
Ondrej Nepela Memorial SP 1 3Lz+3T< 9.26   -0.94 8.32 -1.571
Ondrej Nepela Memorial FS 2 3Lzq+3Tq q 10.10   -1.65 8.45 -2.714
Finlandia Trophy SP 1 3Lz+3Tq q 10.10   -0.59 9.51 -1.000
Finlandia Trophy FS 4 3S+3Tq q 8.50   -0.43 8.07 -1.000
Skate America SP 1 3Lz+3T< 9.26   -0.93 8.33 -1.778
Skate America FS 1 3Lz+3Tq q 10.10   -0.17 9.93 -0.333
Grand Prix de France SP 2 3Lz+3T   10.10   0.93 11.03 1.444
Grand Prix de France FS 1 2A+3T   7.50   1.50 9.00 3.444
Grand Prix de France FS 2 3Lz+3Tq q 10.10   0.00 10.10 0.000
Korean Championships SP 2 3Lz+3Tq q 10.10   -0.35 9.75 -0.714
Korean Championships FS 1 2A+3T   7.50   1.09 8.59 2.571
Korean Championships FS 2 3Lz+3Tq q 10.10   -0.24 9.86 -0.429
Four Continents SP 2 3Lz+3Tq q 10.10   -0.51 9.59 -0.889
Four Continents FS 1 2A+3T   7.50   1.14 8.64 2.556
Four Continents FS 2 3Lz+3T   10.10   1.35 11.45 2.111
World Championships SP 2 3Lz+3T   10.10   1.43 11.53 2.556
World Championships FS 1 2A+3T   7.50   1.26 8.76 3.111
World Championships FS 2 3Lz+3Tq q 10.10   -0.08 10.02 -0.222
World Team Trophy SP 2 3Lz+3T   10.10   1.43 11.53 2.333
World Team Trophy FS 1 2A+3T   7.50   1.50 9.00 3.444
World Team Trophy FS 2 3Lz+3T   10.10   1.69 11.79 2.778

ショートフリーで1回づつ3Lz+3Tがあり、フリーでは2A+3Tも入ってきます。

3Lz+3Tにはqが付きがちでした。16回飛んで<が2回、qが9回。クリーンに飛べたのは7回で確率は5割以下です。ただ、転倒まではしない強さはあります。昨シーズンも回転不足は目立ちつつもコンビネーションで転倒はせずにいました。

2A+3Tの方はフランス杯以降に入ってくる要素ですが、これは5分の5成功。最低でも平均GOE+2.556 計算できる要素です。自信をもってフリー冒頭のジャンプに入れる、という構成になっているように見えます。

 

○3連続ジャンプ

Event     Elements   Base   GOE Scores AvGOE
Ondrej Nepela Memorial FS 9 1Lo+2A+2A+SEQ   7.81 x 0.00 7.81 -0.143
Finlandia Trophy FS 2 3Lo+2A+2T+SEQ   9.50   0.90 10.40 1.875
Skate America FS 8 2Lz+2T+2Lo   5.61 x 0.09 5.70 0.444
Grand Prix de France FS 8 3Lz+2T+2Lo   9.79 x -0.67 9.12 -1.111
Korean Championships FS 8 3Lzq+2T+2Loq q 9.79 x -1.77 8.02 -2.857
Four Continents FS 8 3Lz+2T+2Lo   9.79 x 0.93 10.72 1.444
World Championships FS 8 3Lz+2T+2Lo   9.79 X 1.01 10.80 1.667
World Team Trophy FS 8 3Lz+2T+2Lo   9.79 X 1.26 11.05 2.000

3連続は、構成の試行錯誤が終わってからは8番目の要素として入れています。ルッツからの3連続で2回転2つ付き。やはりシーズン終盤の3試合はプラス評価のいいジャンプを飛べています。

 

昨シーズン4大陸2位でチャンピオンシップの初表彰台を得てから、今シーズンはさらに1段上がり4大陸タイトルとワールド表彰台を手に入れました。シーズン後半にしり上がりに調子を上げていくという強い選手のスタイルを今シーズン一番しっかりと見せたのがイ・ヘイン選手でした。韓国は代表争いし烈で、次のオリンピックシーズンには強いジュニアも上がってきます。この実績を上げても来期も、オリンピックも、代表は確実ではない。

このまま韓国のトップを走り続けられるかはわかりませんが、来期はグランプリシリーズからのご活躍を期待します。