22-23 インガグルゲニゼ

2009年4月23日生まれ

ジュニア1シーズン目

シーズン獲得賞金:$1,000

世界ランキング:93位

シーズンランキング:44位

シーズンベストスコア 190.52 (30位) JGPエーニャ

ショートプログラムシーズンベスト 63.62 デニステンメモリアル

フリーシーズンベスト 127.48 JGPエーニャ

ショートプログラム楽曲:Giselle など

フリープログラム楽曲:Sweet Dreams など

スピンレベル4率 25/36 = 69.4%

ステップレベル4率 0/6 = 0.0%

スピンオールレベル4 1/6

スピンステップオールレベル4  0/6

ジャンプ要素回転不足率 2/60=3.33%

ジャンプ回転不足なし 4/6

スピンステップオールレベル4 ジャンプ回転不足なし 0/6

 

○22-23シーズンの戦績

Grade Event Pl Total SP FS
JGP JGP Riga 4 180.28 58.80 121.48
JGP JGP Egna 3 190.52 63.04 127.48
IC Denis Ten Memorial 1 174.18 63.62 110.56
IC Bosphorus Cup 2 171.05 52.58 118.47
IC Dragon Trophy 1 177.82 53.73 124.09
WJ World Junior 9 172.50 52.02 120.48

グルゲニゼ選手は2009年生まれでシーズン開始時13歳。今シーズンからジュニアに上がります。ジョージア国籍として出場してきますが、昨シーズンまではロシア国内で試合に出ていました。ロシアジュニア15位の実績はあります。そういうわけで元ロシアンの1人ですが、昨季までのノービス時代に国際大会出場経験はなかったはずで、ジョージア代表として初めて国際舞台に立っていく形になります。

初陣は9月に入ってのジュニアグランプリリガ。ショートプログラムは大きなミスはなかったものの58.80の5位スタート。3位までは5.07差ですので少し差があります。フリーはトリプルアクセル投入かと言われていましたが回避。ただしコンビネーションをすべて1.1倍に入れる強構成。3連続の転倒が残念でしたが121.48と120点に乗せトータル180.28と首位に立ち残りの選手を待ちましたが4位。表彰台には届きませんでした。

2戦目はジュニアグランプリ最終戦のエーニャ。優勝すればファイナルあるけど吉田陽菜千葉百音、という日本の高校2年生2人に韓国のキムチェヨン選手という強いメンバーに囲まれて4人で2枚の切符を争う構図です。ショートは全要素プラス評価63.03を出しましたが4位。3位は1.03差、1位までは7.25あるので少し厳しいかというフリー。トリプルアクセル投入しましたがアンダーローテーションの転倒。しかし以降は全要素プラス評価でまとめ127.48まで伸ばし、トータルスコア190.52と190点に乗せて残り3人を待ちます。最終順位は3位。ファイナルは届きませんでしたがジュニアグランプリの表彰台に上がることが出来ました。

 

ここからB級大会巡りをします。

デニステンメモリアルはフリー2転倒と伸びないながらも優勝。11月末からのボスポラスカップではショートからコンビネーションでトリプルアクセル入れようとするものの不発。この大会は2位に終わります。

年が明けて2月にはドラゴントロフィーへ。ショートのトリプルアクセルはやはり転倒。しかしフリーでは冒頭GOEマイナスですがトリプルアクセルを下りると、2本目はコンビネーションでそれも平均GOE+2.000のクリーンなトリプルアクセルをついに決めて優勝します。

 

トリプルアクセル成功者として世界ジュニアへ。日韓決戦みたいな試合になっていますがトリプルアクセル決めてくればグルゲニゼ選手にもチャンスがある、というところだったのですが、ショートは転倒。ジュニアがショートにトリプルアクセルを入れて転倒するということは、コンビネーションが丸々消えるということで痛手が大きいです。52.02の19位スタートとなり表彰台は遠のきます。フリーは第1グループから登場。冒頭トリプルアクセルをqで降りてコンビネーション付き、GOEはわずかにマイナス。2本目、これはクリーンに平均GOE+2.889という高評価。素晴らしい序盤でどこまで伸びていくかというところだったのですが後半はフリップにeとコンビネーションで転倒と失速。120.48まででトータル172.50は最終的に9位となりました。

 

○要素別スコア

Event Total TES PCS J Base J GOE Spin Step
JGP Riga 180.28 99.42 81.86 65.99 3.60 22.46 7.37
JGP Egna 190.52 106.90 84.62 67.76 7.99 23.05 8.10
Denis Ten Memorial 174.18 96.18 80.00 69.82 -3.83 21.96 8.23
Bosphorus Cup 171.05 94.71 78.34 67.26 -0.91 20.46 7.90
Dragon Trophy 177.82 102.47 76.35 70.64 1.94 22.32 7.57
World Junior 172.50 93.30 81.20 67.87 -0.35 18.39 7.39

トータルスコアはジュニアグランプリで190点まで出したのですが以降は170点台にとどまりました。

技術点は106.90が最高としてあります。PCSは80点前後です。1番いい84.62で1項目平均7点ほどになります。

ジャンプの基礎点はドラゴントロフィーで70.64の70点台になりました。これは今シーズン全体で5位にあたる位置になります。

ジャンプの加点はジュニアグランプリのエーニャで7.99まで出しました。

スピンは一番良くて23.05と23点に乗ったくらい。ステップ系要素は8点台までです。

 

○要素別偏差値

Event Total J Base J GOE Spin Step PCS
JGP Riga 58.33 65.43 63.56 58.11 48.72 52.52
JGP Egna 61.71 67.16 72.55 60.08 55.97 54.53
Denis Ten Memorial 56.31 69.17 48.35 56.44 56.87 51.17
Bosphorus Cup 55.28 66.67 54.32 51.44 55.56 49.96
Dragon Trophy 57.51 69.97 60.16 57.65 52.59 48.51
World Junior 55.76 67.27 55.47 44.53 51.51 52.04

偏差値に直すと1試合はトータルスコアで60を超えました。

ジャンプの基礎点は60台後半が出ていて得意要素です。加点の方はいい時は70台まで出ましたが50割れもあります。

スピンは50台が標準ですが世界ジュニアで40台前半というのが残念。

ステップ系要素は50前後です

PCSも50前後

ジャンプで点を取る構図。高い基礎点を保ったまましっかり降りて加点を取れるかどうか、というスタイルになっています。

 

22-23シーズン インガグルゲニゼ選手の要素別偏差値レーダーチャート

レーダーチャートは完全に右寄りです。加点も稼いだJGPエーニャがトータルスコアも最高でした、というある種分かりやすい構図です。

 

・シーズン最高の基礎点構成

JGPリガ ショートプログラムの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
1 2A   3.30   0.66 3.96 2.000
2 LSp4   2.70   0.50 3.20 1.889
3 3Lo   4.90   0.63 5.53 1.222
4 FCSp4   3.20   0.50 3.70 1.556
5 3Lz+3Tq q 11.11 x -0.51 10.60 -0.889
6 StSq2   2.60   0.48 3.08 1.778
7 CCoSp4   3.50   0.10 3.60 0.111
  TES   31.31   2.36 33.67  

ショートプログラムの最高基礎点は初戦に出ていました。1.1倍にコンビネーションを入れる構成です。ステップレベル2なのでこれをレベル4取れていれば32.61まで出るという構成でした。

ノーミスならトリプルアクセルコンボで入れようとしている世界ジュニア構成の方が基礎点は上へ出せます。ただしセカンドも3回転にしないとトリプルアクセル無しより基礎点は下がるので難易度は非常に高いです。それを成し遂げてスピンステップオールレベル4だと34.19まで基礎点は出せました。

上記の31.31構成でステップレベル4にしてGOE満点出せば技術点は46.31となりPCS加味して86.31満点となります。

 

○ドラゴントロフィー フリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
1 3A   8.00   -2.13 5.87 -2.600
2 3A+2T   9.30   1.60 10.90 2.000
3 3Lz   5.90   1.57 7.47 2.600
4 3Lo   4.90   0.49 5.39 1.000
5 FCCoSp4   3.50   0.58 4.08 1.600
6 ChSq1   3.00   0.83 3.83 1.600
7 3F   5.83 x 0.53 6.36 1.200
8 LSp4   2.70   0.63 3.33 2.200
9 3Lz+1Eu+3S   11.77 x 1.18 12.95 1.800
10 2A+3T   8.25 x 0.84 9.09 2.000
11 CCoSp4   3.50   0.35 3.85 1.000
  TES   66.65   6.47 73.12  

トリプルアクセル2本を下りた試合がフリーの最高基礎点で66.65まで出ています。今シーズン5位、ジュニアルールでは2位のフリーの基礎点です。

2回飛ぶジャンプはトリプルアクセルトリプルルッツ。スピンオールレベル4です。ステップレベル4を足せればシニアルールで70.55と70点台の基礎点に出来る構成です。1,1倍に3回転が4本とダブルアクセルもいてそこも強く基礎点高くなる構成です。スピンは9.70なので、あと0.50上げる余地はあります。またダブルアクセルが1つ余っているので3連続を3Lz+2A+2Aにして3S+3Tのコンビネーションを作る、という形で1Euの代替に2Aを入れられるとさらに基礎点は3.03あがります。

この構成でステップ入りにしたときノーミスでGOE満点出すと技術点は100.95と100点に乗り、PCS加味して180.95満点にまでなります。非常に高い構成です。

 

○平均GOE2.600以上

Event     Elements   Base   GOE Scores AvGOE
JGP Riga FS 8 LSp4   2.70   0.96 3.66 3.556
Denis Ten Memorial SP 1 2A   3.30   1.06 4.36 3.143
Denis Ten Memorial SP 7 LSp4   2.70   0.92 3.62 3.143
JGP Egna SP 3 3Lz+3T   10.10   1.85 11.95 3.111
JGP Egna FS 7 3F   5.83 x 1.67 7.50 3.111
JGP Egna SP 1 2A   3.30   0.99 4.29 3.111
JGP Egna FS 8 LSp4   2.70   0.81 3.51 3.111
World Junior FS 2 3A   8.00   2.29 10.29 2.889
JGP Egna FS 10 2A+3T   8.25 x 1.20 9.45 2.889
World Junior FS 3 3Lz   5.90   1.69 7.59 2.889
JGP Egna SP 2 LSp4   2.70   0.81 3.51 2.889
Denis Ten Memorial SP 2 FCSp4   3.20   0.96 4.16 2.857
Bosphorus Cup FS 8 LSp4   2.70   0.72 3.42 2.800
JGP Egna FS 4 3Lo   4.90   1.33 6.23 2.667
JGP Riga FS 1 3Lo   4.90   1.26 6.16 2.667
World Junior SP 2 FCSp4   3.20   0.87 4.07 2.667
Dragon Trophy FS 3 3Lz   5.90   1.57 7.47 2.600
Bosphorus Cup SP 3 2A   3.30   0.88 4.18 2.600
Dragon Trophy SP 3 2A   3.30   0.88 4.18 2.600
Dragon Trophy SP 2 FCSp4   3.20   0.85 4.05 2.600
Dragon Trophy SP 7 LSp3   2.40   0.64 3.04 2.600

評価の高い要素はレイバックスピンとジャンプです。ジャンプはこのジャンプが得意ですというような並び方ではなく、多種多様に入ってきています。1番上にはダブルアクセルがいますが、3Lz+3Tと3-3もあれば3Fと単独フリップもいます。少し下がりますが3Loもいます。さらにトリプルアクセルまでいる驚き。ジャンプは割と弱点なくどれも跳べて、いい時は高評価を得られるだけのものを持っているようです。

ステップコレオが1つもいない、というのも1つの特徴で、ロシア系ジュニアではよくある現象のような気もします。

 

トリプルアクセル

Event     Elements   Base   GOE Scores AvGOE
JGP Egna FS 1 3A< F 6.40   -3.20 3.20 -5.000
Denis Ten Memorial FS 1 3A F 8.00   -4.00 4.00 -5.000
Bosphorus Cup SP 1 3Aq+COMBO F 8.00   -4.00 4.00 -5.000
Bosphorus Cup FS 1 3A F 8.00   -4.00 4.00 -4.800
Dragon Trophy SP 1 3A+COMBO F 8.00   -4.00 4.00 -5.000
Dragon Trophy FS 1 3A   8.00   -2.13 5.87 -2.600
Dragon Trophy FS 2 3A+2T   9.30   1.60 10.90 2.000
World Junior SP 1 3A<+COMBO F 6.40   -3.20 3.20 -5.000
World Junior FS 1 3Aq+2T q 9.30   -0.57 8.73 -0.778
World Junior FS 2 3A   8.00   2.29 10.29 2.889

今季、とにかくトリプルアクセルを飛び続けました。ジュニアにも関わらずショートから入れて以降としていましたがそれはすべて失敗。シーズン前半はすべて転倒でしたが、後半に入って着氷してきます。

10回飛んで転倒6、GOEマイナスが2、GOEプラスの成功ジャンプは2回です。ただ今年に入ってからは6回飛んで4回着氷のGOEプラスが2回。飛べるようになってきている、という状態なようです。

 

○セカンド3回転の要素

Event     Elements   Base   GOE Scores AvGOE
JGP Riga SP 5 3Lz+3Tq q 11.11 x -0.51 10.60 -0.889
JGP Riga FS 10 2A+3T   8.25 x 1.08 9.33 2.556
JGP Egna SP 3 3Lz+3T   10.10   1.85 11.95 3.111
JGP Egna FS 10 2A+3T   8.25 x 1.20 9.45 2.889
Denis Ten Memorial SP 3 3Lz+3Tq q 10.10   0.00 10.10 -0.143
Denis Ten Memorial FS 10 2A+3T   8.25 x 1.01 9.26 2.286
Bosphorus Cup FS 10 2A+3T   8.25 x 0.98 9.23 2.200
Dragon Trophy FS 10 2A+3T   8.25 x 0.84 9.09 2.000
World Junior FS 10 2A+3T F 8.25 x -2.04 6.21 -4.778

セカンド3回転はシーズン前半はショートで3-3を飛んでいました。後半のショートに3-3がいないのはトリプルアクセル入れようとしたためで3-3が飛べなかったというのとは少し違う読み取り方になります。

フリーは2A+3Tを1.1倍似れる構成です。

2A+3Tの方は6回飛んでGOEプラスの成功が5回。成功率は高かったのですが世界ジュニアだけ転倒となりました。

3Lz+3Tは3回飛んでGOEプラスの成功は1つだけですがマイナスもqでついた軽いものまでなので惜しいとかもったいないの領域で、失敗というほどでもないです。

ちゃんと飛ぼうとすればちゃんと飛べる、計算できる要素だけど、トリプルアクセルをショートからコンビネーションで入れようとするとさすがにね・・、といった状態になっています。

 

○3連続ジャンプ

Event     Elements   Base   GOE Scores AvGOE
JGP Riga FS 9 3Lz+1Eu+3Sq F 11.77 x -2.95 8.82 -5.000
JGP Egna FS 3 3Lz+2T+2A+SEQ   10.50   1.43 11.93 2.444
Denis Ten Memorial FS 9 3Lzq+2T+2A+SEQ q 11.55 x -0.94 10.61 -1.571
Bosphorus Cup FS 3 3Lz+2T+2A+SEQ   10.50   1.38 11.88 2.200
Dragon Trophy FS 9 3Lz+1Eu+3S   11.77 x 1.18 12.95 1.800
World Junior FS 9 3Lz+1Eu+3S   11.77 x -0.59 11.18 -0.889

3連続ジャンプはルッツからのサルコウ型と同じくルッツから2T挟んでシークエンス型の2つを前半の3つ目に入れるのと後半の9番目に入れるのと、それぞれ組み合わせで使われていました。

転倒が1、GOEマイナスが2、残りの3回は成功しています。基礎点高めな3連続ですがアンダーローテーションなくすべて基礎点満額取れていますので転倒以外はしっかり点は取れたとみていいのだろうと思います。

 

22年1月までロシア国内で試合に出ていましたが、今シーズンからはジョージアへ移籍。国際大会出場経験もなかったのでスムーズに移籍が進んでジュニア1年目から国際大会にジョージアの選手として出場出来ています。ぎりぎりのタイミングの選択でしたが、これによって人生は大きく好転したとみていいのだろうと思います。国際社会はいろいろと難しい・・・。

トリプルアクセルはやはり魅力です。今シーズンのうちについに着氷、世界ジュニアでISU公認のトリプルアクセルジャンパーとなりました。これで完成形として安定して決めてくると、来期は日韓の強力なライバルとなってきます。

年齢制限被害者世代でもあり、島田麻央選手らと同じくオリンピックチャンスは2030年まで待たないといけません。長いジュニアを彩る1人の選手として活躍していただければと思います。