NHK杯 刺さりまくり

グランプリシリーズ、今期の最終戦NHK杯でした。これでファイナル進出者が揃います。ただ、今回は、結果的にそれとは違うところが試合の後には話題になってしまう無いようになってしまいました。

 

○男子シングル

Pl Name Nation Total SP FS
1 Yuma KAGIYAMA JPN 288.39 105.51 182.88
2 Shoma UNO JPN 286.55 100.20 186.35
3 Lukas BRITSCHGI SUI 254.60 86.42 168.18
4 Nika EGADZE GEO 237.34 81.30 156.04
5 Camden PULKINEN USA 229.32 86.40 142.92
6 Gabriele FRANGIPANI ITA 227.15 78.20 148.95
7 Deniss VASILJEVS LAT 221.95 82.14 139.81
8 Aleksandr SELEVKO EST 221.43 75.85 145.58
9 Tatsuya TSUBOI JPN 216.62 64.63 151.99
10 Luc ECONOMIDES FRA 211.12 74.24 136.88
11 Wesley CHIU CAN 209.16 72.02 137.14
12 Mihhail SELEVKO EST 207.58 81.31 126.27

鍵山選手がショートのリードを守って逃げ切り優勝となりました。グランプリ3勝目。順当にファイナル進出も決めました。

宇野昌磨選手は2位。逆転優勝はならず。それでも280点台後半までは出してきて、徐々に調子が上がっているようにも感じられます。

3位にスイスのルーカスブリッチギー選手が入りました。初グランプリ表彰台です。優勝すればファイナルでしたがさすがに相手が悪い、という試合でした。大躍進した次のシーズンに落ち込む選手も割といますが、昨季の世界選手権8位の後も活躍を続けています。次は12月中旬にスイスのナショナルに出るかわかりませんが、それを経て1月のヨーロッパ選手権へ向かうはずです。

4位にはジョージアのエガゼ選手が入っています。スケートアメリカ4位でしたのでこちらも優勝すればファイナルでしたがさすがにそれは難しかったようです。スケートアメリカにはエテリコーチが帯同していて驚愕したのですが、流石に来日はしなかったようです。フリーは冒頭で痛そうな転倒していてこれは大変だ、と思ったところから以後はほぼノーミス。不思議展開ですが4位に残りました。次は昨季7位のヨーロッパ選手権で上位進出を目指します。

5位にはアメリカのプルキネン選手が入りました。プルキネン選手は昨季からグランプリシリーズ4戦連続5位です。世界選手権も5位実績あります。ちょっと今回はジャンプに苦しんだ試合でした。判定云々以前に苦しんでいました。次は全米で世界選手権代表を目指すことになります。

中国杯で250点越えを果たしていたフランジパーニ選手は今回はスコア伸びずに6位に終わりました。4回転のトーループは所とフリー共に決めてきたのですがサルコウの方がショートフリー共に決まらず。フリーは後半にqが並んで加点も得られず220点台にとどまっています。イタリアは世界選手権の枠は2つ。厳しい戦いになるのですがその有力候補ですので、その来月のナショナルで2位以内に入っていきたいところかと思います

バシリエフス選手は7位。4回転サルコウは今回も決まらず。1つ目で抜けたのかタイミング合わなかったのかで1回転になったあと、もう一回飛びに行って転倒。立ち位置的にグランプリシリーズは完全に調整試合で、ヨーロッパ選手権と世界選手権で頑張ればいい、というところなのでしょうか。とにかく4回転を習得したい、という思いは感じます。スピンで稼げてPCSも出せるので、安定した4回転が入れば強いのですがなかなか入らない。ジェイソンブラウン選手的に4回転無しで極める、というコースでもいいのではと外野は勝手に思ってしまったりしまいますが、その辺は選手心理としては跳びたいのでしょうねえ・

セレフコ兄弟、急遽出番が回ってきた兄の方が8位に入りました。弟は12位。グランプリシリーズで兄弟ともに出るというのはなかなかないパターンかと思われます。日本を楽しんでいっていただければと思うのですが、なかなかそんな時間はないでしょうか。次戦は2人そろってチャレンジャーシリーズ最終戦ゴールデンスピンにエントリーしています。チャレンジャーシリーズなら2人そろっての試合は結構これからもあると思われます。

日本からのもう1人、壷井達也選手は9位に終わりました。ショート散々でしたがフリーは復調。フリーだけなら5位です。もったいなかったのは最後のルッツ。最後に3-3決めていれば技術点90点まで出て160点は見えていました。9位だとポイントも入らず。これくらいの位置の選手にとっては1試合1試合のポイントで世界ランキングを維持することで、来期のグランプリ枠を得る可能性を少しでも上げたかったのですが残念でした。シーズンベストも伸びませんでしたし、ちょっと来期のグランプリ枠は苦しそうに感じます。

 

○鍵山優真選手のフリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
1 4S   9.70   4.30 14.00 4.333
2 4T+1Eu+2S   11.30   2.44 13.74 2.444
3 3Lo   4.90   1.40 6.30 2.778
4 FCSSp4   3.00   0.81 3.81 2.667
5 3A+2A+SEQ   11.30   2.40 13.70 2.889
6 3A F 8.80 X -4.00 4.80 -5.000
7 3Lz+2T   7.92 X 1.43 9.35 2.444
8 ChSq1   3.00   1.93 4.93 3.889
9 3F   5.83 X 1.59 7.42 3.111
10 StSq4   3.90   1.62 5.52 4.222
11 CCoSp4   3.50   1.30 4.80 3.667
12 FCCoSp4   3.50   1.40 4.90 4.111
  TES   76.65   16.62 93.27  

鍵山選手はサルコウトーループ、2本の4回転構成でした。トリプルアクセルの転倒が痛かったですが、その他にセカンド3回転と3連サルコウも3回転で入らず、そのあたりでスコアがだいぶ痛んでいます。逆にみるとその辺までしっかり入ってくれば4回転2本でも技術点100点台後半くらいまで出て、フリー200点が見えています。2回飛ぶジャンプはトリプルアクセルだけになっていましたので、その辺でももう少し工夫次第で基礎点上げられます。実際には4回転が増えて基礎点上がっていく、という構図がシーズン後半に起こるように感じます。今シーズンとんだ4回転サルコウは合計6回で最低評価で平均GOE+3.556 サルコウ2本立てでいいような気がしますが、今はまだコストナー先生からの指導の表現面の強化が優先されているのでしょうか。

スピンステップオールレベル4です。今シーズン国際試合すべてでスピンはレベル4 ステップは初戦のロンバルディア杯のショートのみレベル3でした。安定してレベルは取れています。スコア的には260点台、270点台、280点台と上げてきました。ファイナルは290点台突入で全日本で300点突破という流れで進んでいけるかどうか。

グランプリファイナルはシーズンベスト3位で突入することになります。上二人は300点超え。構成的にはやや劣るので、今の構成のままの勝負だとやや苦しいところはあるのですが、2週間後にどんな構成で入っていくか。楽しみに待ちたいと思います・

 

宇野昌磨選手のフリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
1 4Loq q 10.50   0.00 10.50 0.111
2 4Fq q 11.00   0.00 11.00 0.000
3 3A   8.00   0.34 8.34 0.333
4 3A+2A+SEQ   11.30   2.17 13.47 2.667
5 StSq4   3.90   1.62 5.52 4.111
6 4Tq+3T q 15.07 X 0.27 15.34 0.333
7 2T   1.43 X 0.09 1.52 0.778
8 4Tq+2T q 11.88 X 0.00 11.88 0.000
9 FCSp4   3.20   1.23 4.43 3.889
10 CSSp3   2.60   1.00 3.60 3.778
11 ChSq1   3.00   1.64 4.64 3.444
12 CCoSp4   3.50   1.20 4.70 3.444
  TES   85.38   9.56 94.94  

宇野選手は4回転3種類4本構成。トリプルアクセルで詰まってシークエンス入らなかったところから構成がいろいろ変わっていったので、演技開始時点で本当はどういう構成にしたかったのかは今一つわかりません。今回も4-3をショートフリー共に入れてきました。ショートはアンダーローテーション扱い、フリーもqついていますが、悪いジャンプではなかったかと思われます。

3連続が今回入っていません。優勝した鍵山選手との点差は1.84 結果論ですが、最後のコンビネーションで2Loもつけて3連続に出来れば1.98スコアが上がるので優勝出来ていました。宇野選手なので最後は4回転からでも3連で最後フリップいくか、とも4回転の構えしたところでは思ったのですが、流石にそこまでは思い切りませんでした。きちんと把握していなかったのですが、3連で3つ目にフリップを付ける構成は、21年のNHK杯が最後でしたので、丸2年構成に入れていないようです。

今回の滑りで普通に滑れば300点、というのがやはり今シーズンも出せるのねというのを見せてくれました。シーズンベストは4位ですが、普通に滑ればグランプリファイナルもちゃんと表彰台の真ん中に立つチャンスはありそうです。

 

○男子シングル ショートフリー合わせた要素別スコア

Pl Name Total PCS J Base J GOE Spin Step
1 Yuma KAGIYAMA 288.39 136.37 91.95 18.87 26.29 15.91
2 Shoma UNO 286.55 139.40 101.84 5.40 25.23 15.68
3 Lukas BRITSCHGI 254.60 123.92 83.94 8.60 24.48 13.66
4 Nika EGADZE 237.34 110.78 102.45 -4.86 19.63 10.34
5 Camden PULKINEN 229.32 114.79 79.68 3.31 19.18 12.36
6 Gabriele FRANGIPANI 227.15 112.51 89.60 -6.06 20.59 11.51
7 Deniss VASILJEVS 221.95 124.59 68.57 -9.80 25.85 14.74
8 Aleksandr SELEVKO 221.43 112.53 83.66 -6.98 21.87 11.35
9 Tatsuya TSUBOI 216.62 106.08 83.54 -4.06 22.83 10.23
10 Luc ECONOMIDES 211.12 110.90 68.57 -0.15 20.09 11.71
11 Wesley CHIU 209.16 106.27 79.51 -7.29 22.21 10.46
12 Mihhail SELEVKO 207.58 109.73 74.13 -6.17 21.99 9.90

PCSは宇野選手の勝ち。それでも鍵山選手も9点平均を超えています。バシリエフス選手が3番目でした。壺井選手は、フリーは1番滑走でなければもう少しPCSもらえたようにも感じました。

ジャンプの基礎点はエガゼ選手が1位です。宇野選手は4回転4本フリーで跳びましたが、抜けが1本あって4回転3本のエガゼ選手に基礎点で劣った形です。鍵山選手は3番目でフランジパーニ選手が4番目です。表彰台に乗ったブリッチギー選手ですがジャンプの基礎点はさほど高くなく、壷井選手と変わりません。壺井選手の構成でもしっかり滑ればこれくらいの闘いは出来る、とも取れます。

ジャンプの加点は鍵山選手が圧倒的でした。ブリッチギー選手が2位で宇野選手は3番目。あれだけqが並ぶと加点は伸びません。

スピンは鍵山選手が26点台を出して1位。今期のグランプリ6戦の中で1位のスピンスコアです。バシリエフス選手が25点台後半で2位。バシリエフス選手にとってはこれくらいは平常運転です。宇野選手もしっかり25点台を出しました。

ステップ系要素も鍵山選手が1位でした。宇野選手が2位。この15点台後半は今季の3位4位のスコア。これより上にフランス勢2人がいます。ちなみに15点台以上があるのはもう1人三浦佳生選手なので、グランプリファイナルにはステップ上手が上から5人そろうことになりました。

 

○女子シングル

Pl Name Nation Total SP FS
1 Ava Marie ZIEGLER USA 200.50 62.04 138.46
2 Lindsay THORNGREN USA 198.73 68.93 129.80
3 Nina PINZARRONE BEL 194.66 63.44 131.22
4 Haein LEE KOR 188.95 62.93 126.02
5 Yuna AOKI JPN 184.46 58.28 126.18
6 Anastasiia GUBANOVA GEO 184.32 55.80 128.52
7 Yelim KIM KOR 183.19 59.33 123.86
8 Mai MIHARA JPN 172.64 62.82 109.82
9 Wakaba HIGUCHI JPN 165.69 52.18 113.51
10 Seoyeong WI KOR 158.15 60.63 97.52
11 Lea SERNA FRA 156.04 56.85 99.19
12 Lindsay VAN ZUNDERT NED 125.82 43.46 82.36

アヴァマリージーグラー選手のグランプリ初優勝。失礼ながらまさかの初優勝でした。パーソナルベストは昨年のスケートカナダの186.76 そこから一基の200点突破です。昨シーズンの全米選手権は9位という選手ですが、これで一気に世界選手権代表争いの有力候補となってきました。今期のグランプリはこの1戦のみですので優勝してもファイナルはありません。フリーは最初3つにコンビネーションを固めつつ3-3もない、というある種の安全運転でしたが、この試合のようなテクニカルスペシャリストが相手の場合この戦術は大変有効だったようにも思われます。素晴らしい演技でした。

2位にはソーングレン選手が入りました。グランプリ初表彰台。優勝すればファイナルもあるかも、という試合で、過去実績からするとこちらは無くはないかな、と思っていてのショート首位。ただ、フリー最終滑走で出てきた時点では優勝してもファイナルは無い、という状況になっていました。優勝を逃したのはサルコウの転倒が要因でもったいなかったです。

3位にはベルギーのピンツァローネ選手が入りました。2戦連続表彰台でファイナル進出です。ミスなく無難に滑ったなあという印象。実績積み上げてPCSもだいぶ上がってきました。実は先週ベルギー選手権へ出てからの2週連続の強行スケジュールです。ベルギーは以前とは違って特に女子ではトップ選手が出てきていますので、グランプリシリーズの途中という変な時期にナショナルやるのはそろそろ時期動かしてほしい気がします。ナショナルはヘンドリックス選手欠場もありピンツァローネ選手が初優勝しています。

優勝すればファイナルだったイ・ヘイン選手は4位です。これで昨季からグランプリシリーズは4戦続けて4位。フリーで回転不足5つ取られるとスコア的に厳しくなりました。ワールド表彰台の選手なのでグランプリで4位が並ぶのをどの程度気にしているかわかりませんが、次は韓国選手権で代表争い、という試合になっていきます。

グランプリ初出場の青木祐奈選手が5位に入りました。パーソナルベスト大幅更新ですが、今年春のトリグラフトロフィーのスコアにはわずかに届きませんでした。ただ、この試合の184点は190点台半ばくらいの価値はありそうです。ただ、日本シニアのシーズンベストランクは結局7位。4大陸選手権の選考対象の6位以内に出来れば入っておきたかったところでした。フランス大会だったら同じ演技で190点台後半まで出たようにも感じただけに残念でもありました。審判は同じだから試合の中では公平、という論もありますが、いろいろな選考は試合跨ってシーズン通しての比較で行われるので、審判に差があると公平ではなくなるという現実があります。シーズンベスト24位以内なら来期のグランプリ枠1つの優先権をもらえる。これくらいの位置にいる選手たちにとっては死活問題になってくるもので、それこそ現役を続けるか、引退するかの分かれ目になる選手も出てきかねません。

6位にはヨーロッパチャンピオンのグバノワ選手。今期はグランプリ2戦とも6位となりました。シーズンベストは180点台。昨季はヨーロッパで勝ちましたが今季はベルギー勢が順調。シーズン後半に頑張ればいい立場ではありますが、そろそろ調子を上げていきたいところかと思われます。

ディフェンディングチャンピオンのキムイェリム選手は7位に終わりました。今期全く決まっていなかった3Lz+3Tが今回のフリーで決まってきました。ただ後半乱れてスコアは伸びず。ただ、韓国のシニア勢の中ではシーズンベスト3番目は確保しているので、シーズン後半の代表争いでは、ちゃんとやれば代表に入って来る力は保てていそうです。

強行出場三原舞依選手は8位でした。今シーズン最初の演技を心待ちにしているファンも多くいたと思います的な紹介を受けたりしていましたが、個人的には、全部2回転でもいいから点数どうでもいいから早く終わって、としか思えなかったです。無事・・・、だったのでしょうか・・・。エキシビジョンも出てますし、大丈夫なんだと思いますが、というか、エキシビジョン休んでよとも思いますが・・・。全日本まで1カ月。シーズン後半の選考基準は世界ランキングが高く、ファイナルで吉田選手や住吉選手が優勝しても逆転されないのでそこで満たされています。今期の実績とかもう関係ない位置にいる選手ですので、全日本で表彰台に乗れば普通に代表に選ばれると思われますし、島田選手が上にいての4位あたりでも、代表選考の対象になります。

樋口新葉選手は9位でした。昨シーズン休んでいるのでランキングを上げるためのポイントも欲しいところでしたがそれも取れず。フリーも回転不足4つで厳しい展開となりました。

 

○青木祐奈選手のフリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
1 3Lz   5.90   1.01 6.91 1.778
2 3S   4.30   0.98 5.28 2.222
3 2A+1Eu+3F! ! 9.10   0.38 9.48 0.778
4 3T   4.20   0.84 5.04 2.000
5 FCSp4   3.20   0.69 3.89 2.111
6 2A+2T   4.60   0.66 5.26 2.000
7 3Lzq+2T q 7.92 X -0.59 7.33 -1.000
8 3F!< ! 4.66 X -1.15 3.51 -2.778
9 CCoSp4   3.50   0.55 4.05 1.556
10 ChSq1   3.00   1.36 4.36 2.667
11 StSq4   3.90   1.11 5.01 2.778
12 LSp4   2.70   0.77 3.47 2.778
  TES   56.98   6.61 63.59  

ルッツループは入らなかったですが。あとはいい演技でした。フリップに!が付くのは通常運転です。

ルッツループが決まっていれば、実はISU公認のルッツループ成功最年長記録になるはずでした。ショートはきれいに決まったと思ったのですが・・・。ちなみに最年少記録も13歳7か月でしばらくもっていたのですが、そちらはトゥルソワさんが13歳2か月で決めて更新されています。さらにちなみに、ISU非公認の国際大会ではノービス時代、2014年に出場したアジアンオープンフィギュアで12歳6か月にして3Lz+3Loを全ジャッジプラス評価で決めた記録が残っていて、確認できる範囲では国際大会のルッツループ成功の最年少記録です。ショートのルッツループは絶対回転足りていると思うんですが・・・。

フリーは構成的にはセカンドループが付かなかったことで6トリプルとなって基礎点は今一つ伸びませんでした。シークエンスアクセルが使えると6番目の要素あたりで3Lo+2Aにリカバリーできたりしてよかったのですが、この辺の構成の幅は少し狭いきらいがあります。

また、1.1倍はつうじょう3つあるのですが青木選手は2つだけになっています。これは今大会の判定が厳しかったではなくて、今シーズン通じてのものです。点数として0.46損をする形ですが、安定を重視するには無理に後半にジャンプを持っていくよりもいい、という考え方もありますし、コレオとステップを終盤につなげて長い時間を使いたいという演出上の都合もあるかもしれません。

スピンステップすべてレベル4入りました。

ノービス時代に輝いていたのがジュニアに上がってから苦労して、10代後半は結果が出ませんでした。本田真凜選手、白岩優奈選手、同学年のライバルたちが国際舞台で輝く中、シニアに上がれず、ジュニアグランプリの派遣も受けられなくなり、大学生になっても結果が出せず、つらい時期が続きました。ようやくここ1年で再開花。国際舞台に戻ってきました。

なかなか判定厳しい試合でしたが、そんな中で180点台半ばまで出してきました。全日本で同じ演技したら190点台半ばから後半まで出そうに感じます。世界選手権の代表を争うのは少し厳しいかと思いますが、4大陸代表位までなら可能性のある力を示したかと思います。昨季も全日本の結果だけなら4大陸が回ってきておかしくなかったのですが、ミニマム何も持っていなくて派遣無し。今期は十分すぎるほどのミニマムスコアを持っています。ワンチャン、あると思うので、もう1勝負、全日本でご活躍を祈念いたします。

 

樋口新葉選手のフリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
1 3A< < F 6.40   -3.20 3.20 -5.000
2 3Lzq+3T< 9.26   -1.77 7.49 -2.889
3 3Loq q 4.90   -0.14 4.76 -0.333
4 3S   4.30   0.98 5.28 2.333
5 CCoSp4   3.50   0.95 4.45 2.556
6 3Lzq+2T+2Lo< 9.42 X -1.94 7.48 -3.222
7 3Lo<+2A+SEQ 7.94 X -0.39 7.55 -1.000
8 3F! ! 5.83 X 0.23 6.06 0.444
9 FCSp4   3.20   0.55 3.75 1.667
10 StSq2   2.60   0.56 3.16 2.111
11 ChSq1 F 3.00   -2.00 1.00 -4.000
12 LSp3   2.40   0.38 2.78 1.556
  TES   62.75   -5.79 56.96  

トリプルアクセル投入。アンダーローテーションの転倒という扱いでした。他の試合ならqくらいで基礎点は満額もらえたかもしれません。

それ以外もアンダーローテーション3つにq1つ コレオの転倒まであってマークオンパレードとなっています。このままだと大変ですが、今大会の判定はシーズン通して考えるとあまり参考にならないとも言えます。

現在は世界ランキングも高くなく、シーズンベストも伸びませんでしたので、世界選手権の代表を狙うには全日本の表彰台が最低必要条件となりました。樋口選手の場合は実績はあるので、表彰台に乗ったけれど外される、というのはおそらく無いのではないかとも推測されますが、坂本選手が抜けていてジュニアが強いなか、表彰台に乗るのもなかなか大変です。

次は勝負の全日本ですが、今の樋口選手がどこまで勝負にこだわっていくかどうか? 興味深いところではあります。

 

○女子シングル ショートフリー合わせた要素別スコア

Pl Name Total PCS J Base J GOE Spin Step
1 Ava Marie ZIEGLER 200.50 93.34 64.73 5.84 23.33 13.26
2 Lindsay THORNGREN 198.73 94.98 62.66 4.30 25.59 14.20
3 Nina PINZARRONE 194.66 93.84 62.93 1.77 23.70 12.42
4 Haein LEE 188.95 98.50 58.77 -4.37 22.39 13.66
5 Yuna AOKI 184.46 91.19 57.79 -0.09 22.19 13.38
6 Anastasiia GUBANOVA 184.32 92.21 59.97 1.07 19.06 12.01
7 Yelim KIM 183.19 95.67 54.96 -2.98 23.02 13.52
8 Mai MIHARA 172.64 94.71 50.46 -8.69 22.89 14.27
9 Wakaba HIGUCHI 165.69 88.57 60.73 -9.67 21.74 7.32
10 Seoyeong WI 158.15 82.86 48.36 -1.64 19.31 9.26
11 Lea SERNA 156.04 83.12 49.47 -6.60 21.23 10.82
12 Lindsay VAN ZUNDERT 125.82 73.42 36.76 -8.05 18.48 8.21

PCSはイ・ヘイン選手が1位でキムイェリム選手が続きますが、93点から95点くらいはだいぶ固まっています。青木選手はショートでPCSが全然もらえなかったのですがフリーではだいぶ伸ばしてきていました。1番滑走でなければ、事前の実績が積まれていれば、また違った結果があったかもしれません。逆に樋口選手は実績十分なのですが今大会はPCSを特にフリーで全くもらえていませんでした。

ジャンプの基礎点はしっかり決めて行ったジーグラー選手が1位です。上位3選手は60点超えています。樋口選手もショートフリーでアンダーローテーション6つにダウングレード1つある割には基礎点入っていました。三原選手はフリーはさすがに厳しい演技で基礎点伸びていません。

ジャンプの加点もあれだけアンダーローテーションが並ぶと全体的に苦しいわけですが、それでも上位3選手はプラスを出しています。

スピンはソーングレン選手が25点台。2シーズン前の世界ジュニア以来の25点台でした。

ステップ系要素は三原選手が1位です。ショートフリーステップレベル4 15点台も普通に出す選手ですのでまあこれくらいは、といったところでした。樋口選手はコレオ転倒があってここのスコアは伸びていません。

 

今大会は男子も女子も回転不足が非常に多い大会でした。公には男子の方が物議をかもしていますが、個人的には女子の方の違和感が大変強かったです。特にショートプログラム、あれだけ回転不足のアンダーローテーションが多発、12選手でダウングレード含めて14の回転不足が獲られているのに対して、qが1つもない。確率論的には非常に違和感あって、1/4から1/2足りないものではなくて。0から1/2足りないものをアンダーローテーション獲ってしまった結果、qにあたるものは何もない、というようにも見えました。スピンのレベル判定もいつになく厳しかったですかね。

上にも書きましたが、同じ審判団なのだから1つの試合の中では選手たちから見て公平だ、という論はあるかとは思います。しかしながら、少なくとも同じシーズンの中で、シーズンベストのランキングがあったり、グランプリシリーズでも2戦合計でスコアがいい方がファイナルへ進める、みたいな展開のこともあったりして、試合の勝ち負けだけでなく、試合を跨ったスコアというのがフィギュアスケートでは結構大事になってきます。来期のグランプリシリーズの枠がなさそうだからもうこれで引退しよう、みたいなことは現実としてありえます。

厳格に取ること自体はルールの適用なのでそれは悪いことなわけではないと思うのですが、試合ごとの基準の差が大きすぎるのは問題です。ナショナルのスコアはあてにならない、というのはよく言われることですが、これはまだナショナルと国際大会で基準が違って、そもそもナショナルのスコアは国際大会のミニマムスコアなどに認定されない、というあたりである種担保されています(陸上などではナショナルのタイムも普通に持ちタイムとして認められることがほとんどですが、その辺は採点競技と時間という厳格な物理現象を測定したものの差なのでしょう)。国際大会の、それも同じグランプリシリーズという枠内の試合でこれだけ差が出てしまうのはかなり大きな問題です。

演技の出来以外のところが話題の中心になってきてしまうのは、非常に残念なことでした。