20-21シーズン地方大会エントリー

普段の年ならチャンレジャーシリーズも始まり、ジュニアグランプリシリーズはすでに後半という時期ですが、今年は国際大会はいまだ全滅のままです

そんな中で、全日本選手権へとつながる地方大会のエントリーが揃いましたので見ていくことにします

 

今シーズンは二つの特徴があるように感じます

一つ目は、国際大会での海外派遣が実質的になくなっているので、メンバーが豪華です

いつもの年なら国際大会に派遣されていて地方大会に出ないような選手が、今シーズンは顔をそろえています

もう一つは、え? シニアに上がるの? というジュニア世代の選手がいつもより多いように感じます。

これは、ジュニアグランプリシリーズがないことだったり、世界ジュニアの開催も怪しいからであったりするんでしょうか?

 

エントリー発表から少し遅れていましたが、各地区からの上の大会への進出人数も発表されました。

毎年のことですが、男子は地区大会が予選としての意味をなしていないですね。

上位大会への進出人数の方がエントリー人数より多い、という地区がほとんどです

シニアジュニア問わず

日本の男子は世界の頂点を争う選手が複数いますし、その跡を継ぎそうな選手も出てきたということで、層がだいぶ厚くなったなあという印象を一見受けるのですが、この地区大会レベルまで見ると、まだまだ競技人口が足りず、厚みが足りない、というのを感じます

 

面白かったのは関東選手権

シニアの男子はエントリー二人

鍵山優真選手と佐藤駿選手

こんなところで一騎打ちしてます

まあ、東日本への進出枠は3ありますし、鍵山選手は全日本シードですし、意味はないんですが、エントリーがその2人しかいないというのがなんとも面白い

この二人がシニアに上がらなかったらエントリーゼロになるところでした

こういうの、最もハイレベルな地区大会、と言うんでしょうか?

例年なら、鍵山選手はジャパンオープンに呼ばれそうな立ち位置なんですが、今シーズンは状況が特殊だったから呼ばれなかったんでしょうか? 集客力の足しには結構なるような気がするんですけどね。関東選手権とジャパンオープンは日程丸被りではありますが、シードなので関東選手権に鍵山選手は出る必要はありません。もしかしたら試合数が少なそうな今シーズン、実戦経験を優先して、フリーのみのジャパンオープンを選ばず、関東選手権を選んだということがあったりするでしょうか?

 

男子は、ジュニアからシニアに上がった目玉は間違いなくこの二人なわけですが、昨シーズンの全日本ジュニア3位の本田ルーカス剛史選手はジュニアでエントリーしています。実はジュニアグランプリへの派遣も経験していませんし、今シーズンは世界ジュニア狙いですかね。ただ、近畿選手権とジャパンオープンは日程がかぶっていて、ジャパンオープンの方にも本田ルーカス選手は名前があります。全日本ジュニアはシード権持っているので、近畿選手権はエントリーだけで、実際には出場しないものと思われます

 

あと、大学進学した三宅星南選手、木科雄登選手もジュニアでのエントリーでした

この辺も世界ジュニア狙いでしょうか

男子は今シーズン、世界ジュニア枠が3つある一方で、チャレンジャーシリーズもないし、グランプリシリーズはイレギュラーだしで、この辺の位置の選手は19歳でも世界ジュニアを狙う、というのが妥当なのかもしれませんね

 

男子で気になっていたのが島田高志郎選手。しっかり東京選手権にエントリーです。帰国してるんですかね。ランビエール門下生なわけですが、この先全日本までのスケジュールをどうするつもりなんでしょう? 日本に居続けるしかないのかな。また、所属が東京で東日本の扱いなんだ、というのもちょっと気になるところでした。島田選手が東日本に入ることで、東京の大学生たちの全日本への道が1枠分狭くなる、というようなことのようにも見えたりします

あとは、山本草太選手が中部選手権のエントリーでした。今シーズンは拠点を関西に戻したと聞きましたが、よくよく考えれば大学は中京大学なままなわけで、大学での登録になるので、中部選手権にエントリーで当然ですかね。まあ、中部だろうと近畿だろうと、西日本には変わりないですし、ブロックの通過メンバーがエントリー数より多いのも変わらないので、大勢に影響はないですけれど

 

さて、女子

女子です、メンバーがやたら豪華なのは。そして、もうシニアに上がったの? が多いと感じたのは

紀平選手と宮原選手は日本にいませんかね。シードですしブロック大会へのエントリーはなし。樋口新葉選手もシードでエントリーなし

他は、国際大会派遣がなく、川畑選手以外はシードもないので必然的に地区大会へエントリーする必要があります

 

というわけでオリンピアンの坂本花織選手もブロック大会からエントリー。今シーズン復帰の三原舞依選手もいます。昨シーズンはケガで全日本を欠場した白岩優奈選手もいて、近畿選手権は豪華メンバーです。この辺のレベルの選手がいるわけですが、西日本選手権への進出枠は9 普通の選手にとってはかなり厳しい近畿選手権です。ジュニアから河辺愛菜選手が上がってきて、岩野桃亜選手もシニアでエントリー。トリプルアクセル持ちのベテラン細田采花選手もいますし、全日本経験者が西日本にも進めない、なんて事態もありそうです。

近畿選手権はジャパンオープンとスケジュール被っているので、坂本選手はジャパンオープン呼べなかった感じなんでしょうか

 

中部選手権では本郷理華選手が復帰しました。確か二シーズン前はカナダを拠点にしていましたが、今シーズンは日本で活動ですかね。昨シーズン休養していましたが、今シーズンどこまで調子を戻しているでしょう?

中部では荒木菜那選手がシニアに上がってきました。それもあってやはりメンバーに厚みがありますが、西日本への進出枠は14あるので、そこまでは主要メンバーは問題なく進むのではないかと思われます

問題は、西日本から全日本への進出枠が11しかないこと

グランプリレベルの坂本花織、三原舞依、白岩優奈、横井ゆは菜、山下真瑚、そこに復帰した本郷理華、さらに全日本常連の新田谷凜、松田悠良、九州から竹野比奈、とここまでですでに9人います。

この外数で、シニアに上がった強化指定選手の河辺愛菜、岩野桃亜、昨シーズンからシニアで全日本12位の三宅咲綺、とここですでに定員オーバーの12人目です。

他にもグランプリ出場経験のある大庭雅選手、上にも上げましたが細田采花選手などなど実力のある面々がいます。

西日本選手権が大変過酷なものになりそうです

 

東では、関東選手権に吉岡詩歌選手がシニアでエントリーしています。昨シーズン全日本で10位に入った高校三年生がシニアを選びました。世界ジュニアを目指す道もあったと思うのですが。西の河辺愛菜選手、岩野桃亜選手もそうですが、今シーズンは、高校生年齢で、シニアに上がってすぐにグランプリシリーズの枠をもらえそうにはない、という立ち位置の選手でもシニアに上がる選手が結構いました。全日本出場経験のある北海道・東北の渡辺倫果選手も高校三年生でシニアを選びました。

その辺のメンバーと比べると実績はやや落ちますが、本田望結選手も高校一年生にしてシニアを選んでいます。そして、本田望結選手は、今シーズンから西から東へ移って、東京選手権へのエントリーです

東京選手権には本田真凜選手もエントリーしました。所属は二シーズン前から東に移って東京だったと思いますが、東京選手権へ出場するのは初めてでしょうか。シードながらエントリーした川畑和愛選手や、実力者永井優香選手と三つ巴、あるいは松原星選手や、かつての全日本ノービスのチャンピオンで今シーズンからシニアに上がった青木祐奈選手あたりも割って入って来るかもしれません。

東日本は、全日本への進出枠は9

今シーズンは西と比べるといくらか楽ではあるかな、という気はします

 

ジュニアは、北海道東北が東日本への進出枠が13で一番多いんですね。だいぶ意外です。

まあ、東日本から全日本ジュニアが7人なので厳しいのですけれど

その上、全日本ジュニアから全日本への枠は実質6 世界ジュニアは2枠で、ジュニアグランプリシリーズは中止。

こういう情勢を見ると、高校三年生くらいになると、シニアを選んでしまおうか、と思う部分が出るのは自然でしょうかね。全日本選手権に出るには、全日本ジュニア経由よりもシニアの地方大会経由の方が圧倒的にハードルが低いですから基本的に。

 

西日本の女子のシニアは、今シーズン熾烈だなあ、というのが一番の感想でした

 

代表選考基準など 感想

フィギュアスケートのシーズンが始まりません

地方のローカル大会に地元選手限定、という条件で試合は始まってますが、ジュニアグランプリシリーズも中止、チャレンジャーシリーズも成り立たず、グランプリシリーズのエントリーも決まらない、と国際大会がまるっきりしんでます

 

そんな状態のなか、いい加減決めないと仕方ない、という感じで、世界選手権などの代表選考基準が公開されました

ちょっと、例年と違うな、今シーズン、という感じでしたので、その辺の感想を記してみようかと思います。

 

まず、ユニバーシアード

今シーズン、そうですね、ユニバーシアードのシーズンでしたね。

男女シングル各3枠、まずこれが驚きでした。最近は多くて2枠、少ないと1枠だったような気がするんですが、3枠あるんですね。既報だったのかもしれませんが、私は初めて今回把握しました

昨年度世界選手権代表選手がユニバーシアード出場を希望した場合、選考会を免除し正選手として内定する。こんな基準が入っていました。これは過去になかったことかと思います。結構驚き。

今シーズンのユニバーシアードは1月下旬の予定でした。これが、ご多分に漏れず、延期。つい最近の報道なので、延期が決まったのと内定基準が決まったの、どちらが先かわかりませんが、なかなか難しいことになりました。1月下旬なら、今シーズン、試合経験を増やしたい、と世界選手権に出るような選手も手を上げる可能性があったかと思うのですけどね。

まあ、実際には年齢的に該当するのは樋口新葉選手くらいではありましたが、ユニバーシアード、四大陸、世界選手権、という流れは、コロナさえなければありえなくはありませんでした

今シーズンから大学生になった世代、川畑和愛選手、本田真凜選手、白岩優奈選手あたりにとっては、結構現実的な目標になる大会。四年生の永井優香選手あたりにもそうです。三原舞依選手あたりも、100%フルパワーが厳しいにしても80%くらいの力でユニバーシアード連覇を目指す今シーズン、なんて道もありえた。男子も山本草太選手、島田高志郎選手あたりがこのグレードの大会でタイトルを獲りに行くコースもありそう。なので、3月でも4月でもいいんで開催してほしいんですけどね。

ユニバーシアード。ロシアからはラジオノワ選手、トゥクタミシェワ選手など、結構豪華な顔ぶれが出てくることがあるんですが、唯一取れていない主要国際大会のタイトル、とか言ってザギトワ選手出てきたら面白いんだけど・・・、ないですね。

ちなみに、ユニバーシアードという大会へ出場する条件としては、羽生結弦選手も満たしてる(籍が大学にあり年齢も上限未満)んですが・・・、まあ、出ないですね

なお、ユニバーシアードにはペアとアイスダンスの派遣はないようです。

 

次、世界ジュニア

全日本ジュニア優勝は即内定、というのは例年通りですが、東日本や西日本の得点上位3名とか、そういった地方大会の上位成績が考慮されるというのはこれまでありましたっけ?

今シーズンは、本人コロナだけでなく、まわりの誰かがコロナで濃厚接触者になって大会出られず、というのを何とか救済しよう、というのが各条項に見られるような気がしています

ただ、全日本への参加は必須、というのは基本としては外れないんですね。

過去に世界ジュニアで6位以内に入賞した実績のある選手は、感染症等で全日本出られないときは救済、というのも、ジュニアにはこれまでなかった条項かと思います

これ満たす選手、あんまりいません。ジュニアでないといけないので、かつて満たしたことある選手は当然多数いますが、どんどん卒業していきます。男子では鍵山選手と佐藤駿選手の昨シーズンの入賞コンビが合致します。この二人は、本当に全日本をコロナ欠場した場合、救済で四大陸や世界選手権というわけにもいかないし、3枠にした当事者でもあるしで、世界ジュニアでポイント取ってきてもらおうか、なんならタイトル取り直してきてもらおうか、みたいな救済はありえるかもしれません

女子は、本田真凜選手と白岩優奈選手の二人。樋口新葉選手は年齢的にもうジュニアは不可能です。意外ですが紀平梨花選手は世界ジュニア最高位は8位。この条項には合致しません。

本田真凜選手は、さすがに出戻り世界ジュニアはやらないでしょう。白岩選手は以前やりましたが、大学生になってますし、ねえ、ちょっと無いかなあ。

というわけで、女子の方はあんまりこの条項が生きる局面はなさそうです。

ペアとアイスダンスは、条項的にはほとんどなんでもありですねこれ・・・。はやく、こういう、何でもありにしておかないといけないような競技人口で無くなることを願います

 

 

四大陸選手権

実は四大陸への派遣っていうのが、一番、連盟が恣意的にメンバーを選びやすくなっているように感じます。良くも悪くも、その時の状況を見て特に三人目は恣意的に選んでますよね例年。

今回の条項も、上位にいる選手ならほぼ誰でも選ぶこと可能だよ、というような条項になっているように見えます

全日本に出たらさすがに10位以内に入っていない選手は四大陸にも選びづらい。ただ、逆に、トップテンにいれば選考の対象になる

全日本時点での世界ランク上位6人、というのは、グランプリシリーズがランキングポイント無し、と言っているので、おそらく今の上位6人と同一になるでしょう

男子、羽生結弦宇野昌磨田中刑事、鍵山優真、友野一希、山本草

女子、紀平梨花、坂本花織、宮原知子樋口新葉、横井ゆは菜、本田真凜

となっています

グランプリシリーズのスコア上位6人、というのもあります。今シーズンのグランプリシリーズはどんな意味合いの試合になるかまだよくわかりませんが、日本勢にとっては代表選考の一環にはなっています

全日本へ出られなかった選手の救済条項として、世界選手権6位以内の実績、とあります。これ、派遣対象大会が四大陸選手権でも、救済条件は、四大陸ではなく世界選手権の6位以内です。

これを満たすのは、

男子、羽生結弦宇野昌磨友野一希

女子、宮原知子樋口新葉紀平梨花、坂本花織、三原舞依本郷理華

こうなっています

昨シーズンまではこの救済条項は表彰台経験者だったはずです。表彰台経験者、と切った場合は男子も女子も上の二人のみでした。個人的な感想としては、これが6位まで拡大されているのは、実質的には紀平選手のための条項かな、という気がしています。紀平選手は世界選手権は表彰台経験がなく、4位が実績です。今の女子シングルで、紀平選手が代表に入れない、というのはほとんど考えられないでしょうからねえ

昨シーズン試合出場のなかった三原舞依選手や本郷理華選手を、この条項で救って代表派遣、というのはほぼない、と思いますので、6位まで拡大されたことで恩恵を受ける可能性があるのは、友野選手と坂本選手かな、と思います。紀平選手や羽生選手が、救済条項使ってわざわざ代表に選ぶのに四大陸だけ、というのはあり得ないでしょうし、四大陸も世界選手権も救済条項で、というのも理解を得にくい。そう考えると、四大陸だけに救済で派遣されるには、坂本選手や友野選手くらいのこれまでの実績で、かつ、グランプリシリーズで好成績だった場合、に限られるかな、という印象です。樋口選手、宮原選手あたりも、同じパターンなら四大陸だけ救済、というのがあり得るかもしれません

 

今シーズンは、世界の情勢を考えると、四大陸選手権の代表は、世界選手権の代表とは全く異なる顔ぶれにする可能性が結構あるのではないか? とおもっています。コロナの今後の展開次第ですが、出入国時に何回も隔離が必要な状態になるのは余りに好ましくない。そう考えると、国際大会への派遣は、その試合がシーズン最後になる一回だけに各選手する、という考え方が自然に感じます。そうすると、今シーズンは中堅選手にとっても全日本で上位に入って四大陸へ、というのが結構現実的な目標に感じます

 

 

世界選手権

ここは、救済条項以外はあんまり例年と変わらないかな、という印象です。全日本で表彰台、あるいは世界ランキング上位3位まで、シーズンベストスコア3位まで、というのは見慣れた文言です。一つ見慣れないのは、グランプリシリーズで表彰台に上がった上位2名、という文言ですが、これは、グランプリファイナルが全日本より後ろになったことによる読み替えなのでしょうきっと

欠場者の救済条項は四大陸と同じで世界選手権6位以内入賞経験者です。気になるのは、欠場理由の範囲。けが・感染症等のやむを得ない理由 とありますが、等にどこまで含むのか? 羽生選手が、感染症予防のためとか、紀平選手や宮原選手、あるいは宇野選手が、日本への渡航が不自由なためとか、そういった理由での欠場の場合、等、に含まれるのかどうか? 

含んでしまってもいいような気はしますけどね。羽生選手、宇野選手、紀平選手あたりは。ただ、宮原選手は昨シーズンの成績が微妙なので、救済条項からの世界選手権代表、というのはなかなか難しいのではないかと思います。代表枠確保のためには計算できる選手として入っていてほしいですが、直近実績と道義的な部分を考えると難しいかな。ただ、グランプリシリーズのスコアで紀平選手に次いで2番目で、他の選手よりも10点以上上、とか、それくらいはっきりした結果が出ていれば、宮原選手にもそういう道はありそうな気もします。

 

宮原選手は公式に、地区予選免除令が出ていました。実際にはスケートカナダなら西日本選手権と被るので、免除令なくても通常のグランプリ対応で問題なかったんですけれど。

心配なのは島田高志郎選手。グランプリシリーズと被らないですし、実績的に地区予選免除ともいわれないので、結局どうするんだろう?

本郷理華選手も、いまどこにいるんですかね? 休養前はカナダが拠点でしたが、今現在どこにいるか? カナダにいたとして、昨シーズン欠場でシーズンスコアがなく、世界ランキングも低い本郷選手は、スケートカナダに基本的には出られません。世界選手権6位の実績があるので、復帰枠使えば出られますが、コロナでぐちゃぐちゃな今シーズンに復帰枠使うか??? というのは疑問。どうするんでしょ。素直に名古屋で練習して地区大会から今シーズンは出るのがいい気がしますが。実際には休養が一シーズンで終わってちゃんと復帰してくれるかもわかってなかったりもします

 

 

久しぶりに、なんだか少し状況が動いたので、代表選考の展望というか、単に思うことというか、記してみました

 

 

 

N高東京

N高って何?」

中学三年生の時に紀平梨花さんが、何かの競技会での所属アナウンスを聞いて、川畑和愛さんに聞いたとか。

ホントかどうかはわかりませんが、ある種、人生の一つの進路が変わった瞬間だったのかもしれません

 

N高、略さずに記すと、N高等学校は2016年4月設立の通信制の高校です。創立4年とちょっと。最近できた学校ですので、例えば羽生選手あたりでは選択肢になりえませんし、女子でも宮原知子選手あたりでも選択肢として存在しませんでした

N高の在校生あるいは卒業生として、フィギュアスケート関係者では、上記の川畑和愛選手、紀平梨花選手の他に、アイスダンスの吉田唄菜選手もいます

 

通信制高校にもスクーリングといって登校する機会があります。N高の場合本校が沖縄県うるま市与那城町にあり、その他に全国各地にキャンパスがあります。通信制ではありますが、通学コースもあり、通学コースは、沖縄に限らず全国各地のキャンパスに通学することになります。ネットコースの場合のスクーリングは、2020年からは、2年次に一度沖縄本校に4泊5日で通うことに基本的になっており(収入等による例外規定あり)、1年と3年の時には各地の校舎に通うことになります。

川畑選手、あるいは紀平選手が、N高のあとに、東京とついて、「N高東京」という登録になっているのは、このスクーリングの先が東京である、ということを意味しているはずです

ちょっと不思議なのは、東京都内の中学に通っていた川畑選手はともかく(通学コースですし)として、濱田先生の下で関西に拠点があった紀平選手が、東京の扱いになっている点です。兵庫の中学に通っていたはずですし、N高には大阪校舎もありましたので、そちらを選ぶのが自然な感じがするのですが、そのあたりはどういった意志が働いたのでしょうか

 

N高には「修学旅行」と名のついた行事はないですが、2年次の沖縄でのスクーリングが、ある種の修学旅行を兼ねているようにもみえます。授業、という形で、英語、生物、地理、体育、などのカリキュラムが組まれていて、時間割表だけ見るとぞっとするようなスケジュールなのですが、体育はマリンスポーツであったり、生物の飛翔について紙飛行機を飛ばすなど実習を通じて学ぶであるとか、座学ではない部分が多くを占めます。本当の意味での、学を修める旅行、といった装いです。

生徒数が多いので、おそらく一度に全員があつまるのではなく、いくつかの日程に分かれているのだと思うのですが、国別対抗戦でショート83.97の当時の歴代最高スコアを出して始まり、中止になってしまったカナダでの世界選手権で終わった、忙しい高校2年生の一年間の中で、紀平選手が4泊5日で沖縄に行っていたかは不明です(6月7月くらいなら行けた気もしないでもない 本当の修学旅行ではないので、逆に、卒業のために参加が必須です基本的には ただ18年4月入学の紀平選手は、回避の手段もあるようです)

 

 

N高等学校は、学校法人角川ドワンゴ学園による運営です。角川書店を母体とし、2014年10月に、株式会社ドワンゴを取り込んだ、今の株式会社KADOKAWAが運営母体、ということになります。角川の名物社長、角川歴彦氏と、将棋の電王戦を手掛けたりしていたIT会社ドワンゴ。この両者が合併された会社が運営母体の通信制高校。というわけで、従来の通信制のイメージとはだいぶ異なっていて、通信制の通信が、ITに強く振り切ったものになっています。

 

通信制であり、一つの校舎に収容する、というような物理的制限がないこともあって、N高の生徒数は膨大な数になっていて、2020年4月時点で、14,852名以上を数える、と公表されています。普通の高校の生徒数と比べると、桁が一つ違う領域です。

大学進学実績は、学生数の割にはそれほど目立ったものでもありません

2020年合格実績として、東京大学1名、京都大学3名、筑波大学4名をはじめとして、国公立大学は23名です。私立では、慶應義塾大学13名、早稲田大学8名、などとなっています。これらは現役生だけでなくいわゆる浪人生も含めた数です。川畑和愛選手は、この早稲田大学8名の中の一人にカウントされますかね。

実力ある予備校講師の指導も受けられ、大学受験を目指すためのカリキュラムもしっかりある、とされれていますが、実際には今までの実績で見ると、オーソドックスに有名大学へ進学する、ということを考える中学生にとっては、まだ、N高というのが、あまり選択肢として挙がってきていないのかな、と感じます。実際、中高一貫が流行っている中で、N高はそういった概念から外れますし、また、公立中学からの進学としても、高校入試、という関門が(事実上)無しで入れてしまう、というのは大学受験というのを中心に考えた場合は、あまり最初の選択肢としては上がってこない、というのが今の日本の環境だと思います

 

学費は私立学校としては安いと言えると思います。就学支援金、いわゆる、高校無償化と呼ばれるものの支援金を計算に入れないとして、以下記します(支援金は年収により変わるため)

入学金は1万円です。施設設備費、と呼ばれるものが毎年5万円発生します。教育関連諸経費が1万3千円請求されます。その上で、授業料は1単位7,200円で、年間の必須単位数が25なので、単純計算では18万円になります。すべて足すと25万3千円です。入学金は初年度のみなので、2年3年では24万3千円になります。3年間で73万9千円です

引き合いに、開成高校でも出してみましょうか。入学金だけでまず32万円かかります。施設拡充資金で12万円。授業料は月額で41,000円かかります。施設維持費と実験実習料がそれぞれ月額6,000円。生徒会会費月額550円 父母と先生の会会費月額2,800円。そのほかに、入学時に1年生は1口10万円で1口ないし2口の寄付(任意)をお願いしているそうです。寄付(任意)をお願い、ってよく見るけど謎の文言ですが、ようは1年生の時点で合計100万円を超える金額掛るわけです。

開成高校は例で出しましたが、有名私立高校はたいていそれぞれ、内訳の前後はありつつも、こんなものです。それと比べるとN高は破格の安さである、と言えそうです。ついでに言うと、制服代、なんてのもかかりませんね(N高でも通学コースには制服あります 任意ですが)。

 

 

N高は通信制ではあるものの、高校ですので、学習指導要領に従ったカリキュラムを受けることにはなります。そのあたりは、IT化されていて、遠隔で受けられるというだけで、中身は一般の高校とあまり変わらないはずです。まあ、テストが年一回、というのはあまりないでしょうけれど。(テストはリモートではなく、通学して受けます)

特徴的なのはやはり通常カリキュラムではなく、それ以外の部分でしょう。

アドバンストプログラム、とN高では呼ばれている課外授業がまず挙げられます。運営母体としてドワンゴが入っていることもあってか、やはりIT系のものが中心。プログラミングというちょっと幅広い表現のものに始まり、もう少し枠を狭めて、WEBデザインや機械学習と言ったものもあります。また、各種クリエイティブ分野ということで、作家、イラストレーター、ボーカロイド、ゲーム、声優、ファッション・ヘアメイクなどなどの分野も学ぶことができます。このあたりは、専門学校色が強いでしょうか

 

課外活動で有名になったのはネット遠足でしょうか。ドラゴンクエストⅩオンラインの中で生徒が集まってネット遠足をするという。まあ、ネット遠足自体は参加が任意なので、本当に単なるイベント、課外活動なのですが、普通の高校、普通の通信制高校ではありえないものでしょう。ぶっ飛んでる、というようにも見えますが、必須ではなくて任意参加ですので、まあ普通の高校でも、文化祭のとある一コマ、程度にはありえる光景なような気もします

 

課外活動で継続的に行われているものとして目立っているのが、ネット部活でしょうか。目立つ柱は二本、起業部と投資部ではないかと思います。

起業部は、実際に年間最大で1,000万円を活動費として用意し、起業するところまでを目指すようです。この部活、まず、入るのが大変で、セレクションがあります。野球やサッカーやスポーツの強豪校で、入部選考があるのと同じように、起業部には入部選考があります。開校した直後の第一期では、その入部選考の審査員として、角川の社長川上量生氏、ドワンゴの社長、夏野剛氏と並んで、ホリエモンこと堀江貴文氏が名を連ねていました。大企業経営者と、自分で起業して企業を大きくした実績のある人々、というのが審査員であり、なかなかハードです。

投資部の方は、あの村上ファンド村上世彰さんが特別顧問として名を連ねています。実際に、村上財団が一人当たり20万円を拠出し、部員はそれを元に投資するようです。投資対象は、東京証券取引所上場銘柄、に限られるというのは明記されていますが、ミニ株としても買えるのか? など細かいところまではわかりません。損失が出ても返済する必要はないが、利益が出た場合はその部員のものになる、とされています。

村上ファンドの是非、という点では賛否いろいろあるかと思うのですが、この村上さん、投資に真剣な人ではあると思うので、投資教育という点では結構真剣にやってくれるんだろうな、とは感じます。ある種の自己弁護なところもあるのかもしれませんが、世の中の、お金というものに対して、汚いイメージがついているのをなくしたい、という思想がたぶんあって、こういうところに出てきて、特別顧問なんてことをしているのでしょうきっと。

個人的には、高校生くらいで、お金というもの、投資というもの、市場というもの、について知っておくのは良いと思うので、部活であることがどうかはともかくとして、活動としてはいいのではないかと思います

 

さて、こんなN高等学校。進学先としてどうですかね?

紀平梨花選手にとっては、良い選択だったのではないかと思います。こういう言い方が適切かわかりませんが、15歳の時点で紀平選手はもう人生ほとんど決めていたでしょうから、その決まっている人生から考えると、学校に通う、ということが必要か? と考えると、そうでもない。ただ、高校を卒業するというのは保険の意味でも、また、人生経験の意味でも有用である。この二つを兼ねたものとして通信制高校があり、その中でもN高という選択があった。紀平選手みたいな場合は、英語はきっちり学んだ方が良いでしょうし、国際的に活躍していくなら、国語とか、日本史世界史地理、あたりの知識もあったほうがいい。また、競技の特性として、物理の知識もあると、感覚だけでなく理論として体の動きと回転の関係、なんてものも理解できてよいのでしょう。一方で、紀平選手が生物学んで黄色ショウジョウバエの遺伝実験とかするのは、見ていて微笑ましいという価値はあっても、実質的にはそんなところに時間使ってもって感じでしょうし、二次方程式の解き方学んでもねえ、という気もする

その辺全体を見て、いい選択だったんだろうと思います。

 

一方で、川畑選手にとってはどうだったか? 彼女に限らないのですが、スポーツ選手を目指す人が選ぶ進学先としては、一つの弱点がたぶんあります。それは、通常、通信制高校は、全日制の高校と同じインターハイには出られない、ということ。通信制のインターハイはありますが、それは全く別物で、失礼ながら競技レベルも異なる。ましてフィギュアスケートレベルの競技人口だと、通信制のインターハイなんて無いでしょう。ただ、ごくまれに、通信制でも全日制のインターハイに出場できるような仕組みになっているところがあるようですが、おそらくN高はそういったことはしていなさそうです。実際、川畑選手は3年間、インターハイへの出場はありませんでした。まあ、3年時には全日本選手権で3位表彰台に乗った選手ですから、インターハイ別に興味なかったし、と言い切っても誰も文句言えないんですけれど、1年2年次にインターハイがなかったことはどうだったか?

したがって、個人競技で、インターハイレベルに興味のない選手にとってはいいですが、インターハイレベルの水準の選手にとっては、貴重な実践の場が失われることになるので、あまりいい選択ではなさそうです。また、団体競技の選手も基本的にはダメでしょう。例外的に、サッカーでクラブユースをベースに活躍している選手にとっては、高体連の試合はもともと関係ないので、N高というのがいい選択肢として浮かんでくると思われます。

そうやって考えると、スポーツ系でN高が合いそうなのは、サッカー、フィギュアスケートの他には、卓球や競泳あたりですかね。高校生でも世界のトップで戦える、という競技は男子より女子の方が多いので、より、女子に向いた選択肢になるかもしれません。スキージャンプの高梨沙羅選手なんかもそんなパターンでした(インターナショナルスクール~大検を経ての大学進学)が、そういった競技レベルの選手は、上記で上げた競技以外にもきっといるでしょう。

 

だいぶ長々と書き記しましたが、N高等学校というのはこんな学校です

15歳時点でやりたいことがはっきりしている人、にはいい選択肢なのではないかな、と思います。現時点では、在校生~卒業生の中で、紀平選手の実績というのが突出していますが(他に囲碁女流本因坊というのはいますが国内レベル)、この先15歳時点で世界に通用している人、の選択肢として選ばれることが増えていくのではないかと思います。

 

 

 

グランプリシリーズ???

今シーズンのグランプリシリーズ、どうなるのかと思っていたら、やると言ってますね?

ただ、これは、グランプリシリーズなのか? という感じにもなっています。グランプリシリーズ代替大会、みたいな様相です

 

まず、言われていることとして、

開催国の選手、または、開催国でトレーニングしている、または、それ以外の場合はそれぞれの地理的エリアで、関係国への入国に関して衛生上の制限の適用を受けていること、が条件とされているようです

この辺は日本の報道でもそのまま言われていることですね

地理的エリアは、フランス大会の場合EU圏とか、そんな範囲を指すでしょうか。

 

また、世界ランキングのポイントは付与しない、ともされています

さらには、ISUチャンピオンシップ大会のミニマムポイントのカウントにもしない、とされています

 

ここは、グランプリシリーズだな、という点ですが、放映権は原則として、すでに権利を保有しているメディアパートナーがそのまま保持して放映する、という記載もありました

グランプリファイナルをどうするかは、結論が出次第情報提供します、だそうです

 

なんだかもはやそれはグランプリシリーズなのか? という感じではありますが、放映権料とオリンピックの準備大会としてのファイナルのためにはやっておきたい、というのが現実としてきっとあるのでしょう。

個人的には、オリンピックの開催地で、前のシーズンにファイナルを開催する、というのは準備として大事だと思うのでそれはなるべく何らかの形でやってほしい部分はあるのですが、平昌なんかとは違って、毎年グランプリシリーズがやって来る中国なら、そんなに心配しなくてもそこは平気かも、と思ったりもします

あと、放映権の方は、この大会形式で、権利持ってる人は納得するのかはかなり疑問として残ります。

 

その点以外を見ると、これはまあ、甲子園予選代替大会みたいなもんですかね

たぶん、これが初めてのグランプリシリーズ出場、という選手が多数出てくるんだと思うのですが、これをグランプリシリーズ出場と言ってよいのかどうか? という悩みが出てきます

 

さて、それはそれとして、誰がどこの大会に出てどういうものになるか? というのをちょっと想像してみます

 

あんまり考える必要がないのが5戦目のロシア、ロステレコム杯

まあ、何がどうあっても女子は激戦で、男子も、ロシア勢だけでもそんなに違和感なく大会は行えるんじゃないかと思います。練習拠点がロシアのはずの選手としては、女子ではケガから回復していればカザフスタンのトゥルシンバエワ選手と、アゼルバイジャンのエカテリーナリャボワ選手あたりがいるはずです。リャボワ選手はプルシェンコさんのところにいたはずですが、トゥルソワ・コストルナヤ両選手がやってきて、どんな気分なんでしょうかね

男子だとジョージアのクビテラシビリ選手がいるはずです

各選手1試合でファイナル12人、というのはまだ決定事項ではないようですが、12人で決まるとすると、ロシアからでもファイナルに出られるのは2人となります。これは厳しい。ロシア選手権の前に、エテリvsプルシェンコが、まずここで見られることになる。もしかしたら、コロナの影響で、ここは面白くなったのかもしれません

ロシア勢では、メドベージェワ選手がどうするか? というのも一つのポイント。まだカナダに来ていない、という報道がありますので、ロシアにいるのだと思いますが、ロシアで出てこの激戦に参加するかどうか?

 

 

3戦目の中国も、あんまり考える要素がないです

中国を拠点としている中国外選手っているのかなあ?

男子はボーヤンジン選手とハンヤン選手がいるので、まあ、それはそれとして楽しめるでしょう。

女子が・・・、大丈夫かなあ?  昨シーズン、中国国籍の選手のベストは、ホンイーチェン選手がロステレコム杯で出した175.77   もしかしたら、今回は、中国杯の優勝スコアがロステレコム杯の12位のスコアを下回る、なんて事態が生じるかもしれません

ちょっと興味あるのは、香港のクリスティレオン選手が、こういう事態の時に中国杯への出場を選択するかどうか? というのがあったりします

あとは、12人の枠、どこまで埋まるんだろう? というのもあります

 

4戦目のフランス杯は、EU圏で活動する選手たちが集まる感じになるでしょうか

ランビエール先生のところにいる選手はフランス大会に出ることにおそらくなるでしょう。ロシアはEUではないので、出入りが面倒なはずです。宇野選手はつい先日、ランビエール先生のところにいる写真がありましたので、そのままそこでトレーニングを続けて、フランス大会に出場と思われます。島田高志郎選手も同じ条件なのですが、12人の枠に入れるかちょっと心配だったりします。バシリエフス選手もフランスに出るでしょう。男子では他に、ケビンエイモズ選手を筆頭としたフランスの選手は当然と言おうとして、あれ、エイモズ選手、練習拠点アメリカだっけ? とちょっとわからなくなりました。イタリアのリッツォ選手やグラスル選手も普通にいけばフランス大会に出るんでしょうけれど、どうかな。

周辺国という点ではチェコブレジナ選手もいますが、練習拠点はアメリカなはず。いまどこにいるか? というので変わってきそうで、そういった選手の動向次第で、島田高志郎選手がフランス大会に出られるかどうかも変わってきそうに感じます

島田高志郎選手にはもう一つ問題があって、グランプリシリーズがフランス一大会への出場の場合、日本の地方大会と時期がかぶりません。これはつまり、全日本選手権の予選としての地方大会(西日本選手権なはず)と時期がかぶらないため、予選免除の権利が得られない、という事態が生じます。これをどう考えるか?

 

よくわからないのが女子。フランス選手や、スイスのパガニーニ選手あたりはフランスに出てくると思うのですが、あれ? もしかして? というのが紀平梨花選手。先日、スイスのランビエール先生の下での合宿の模様がインスタグラムにアップされていました。日本に出入りするのも面倒、カナダに渡るのも大変、となったときに、そのままランビエール先生のところでしばらくトレーニングする、という選択肢もなくはなくて、その場合はフランス大会に出る、という選択肢が出てきます。

 

初戦にスケートアメリカがあるのですが、ここが練習拠点という選手が結構いるので、その選手たちが、今どこにいるか? というので情勢が結構変わってきそうです。カナダ国籍のメッシング選手は出生地も練習拠点もアメリカ合衆国なので、スケートアメリカの方に出るでしょうか。ナムニューエン選手は、いまは拠点はどっちでしたっけ? アメリカの方で出たりするのかな? 逆に、ジェイソンブラウン選手は、練習拠点はカナダ。どっちにいるのかこれもよくわかりません。ネイサンチェン選手はアメリカ国内なので、出る気があれば(そろそろそれが怪しい)アメリカで出るでしょう。ヴィンセントゾー選手は、今シーズンどうするか自体もよくわかりませんが、まさかこの情勢で濱田先生のところで練習してたりしないでしょうから、出るならアメリカでしょうか。

女子はどうなんでしょう。テネル、ベル、チェン三選手はアメリカにいて普通にスケートアメリカと思われます。アメリカ拠点の海外選手、女子は意外と少ない? イムウンス選手は昨シーズン韓国に帰ったはずなのでアメリカには出てこない。そうすると、本田真凜選手くらいになってたりするんでしょうか?

そうなった場合、アメリカ国内選手権の上位選手が出て来たりすることになるのですが、実は気になっているのが、昨シーズン全米選手権12位のグレイシーゴールド選手。優勝したアリッサリュウ選手はジュニアなので、こんな条件の時でもグランプリシリーズには出られない。他国籍のめぼしい選手が本田真凜選手くらい、となると、11番目で入ってくることができる可能性があります。ただ、これがまだはっきりしていないのですが、通常のシーズンの場合、グランプリシリーズにもミニマムスコアがあります。ゴールド選手はこれを持っていません。中国なんかもそうですが、自国選手で空いている枠を賄おうとした場合、ミニマムスコアないんですけど? ということが生じるはずなのですが、これをどうするのか、ISUの明言はまだなかったはずです

あれ、フランスのメイテ選手がアメリカ拠点だったかな? だとすると、ゴールド選手にまで枠がそもそも回ってこないかも? でも、本田真凜選手、家族でユーチューバーしてるから、日本滞在中で渡米しないかも? それにスケートアメリカだと、東日本選手権と重ならないから、全日本予選としての地方大会に出ないといけなくなるし、帰国後14日以内に大会来ちゃうしで、日本にいる選択をすることになるかも

などなど、情勢不透明ですが、グランプリシリーズという名の付く大会で滑るゴールド選手をまた見たい、という期待感はあります

 

 

さらに情勢不透明なのがスケートカナダです

オーサー先生のところに多数の生徒がいるのですが、これがまた、ほとんどみんな今来てないよ報道がありました。この選手たちがどうするかによって、スケートカナダの顔ぶれ、レベルが全然違ってきます。

男子の最大の注目は、羽生選手がどうするかです。このレベルの選手になると、個人的には、全日本免除でカナダに早めに行かせてあげて、グランプリもスケートカナダに出て、世界選手権までそこでトレーニングしている、というのがいいような気がします。大会間隔があくと、練習に倦みが出る、というような選手でもないでしょうし。

韓国のチャジュンファン選手もどうしますかね。これも、韓国選手権免除でいいんじゃ、というくらいのレベル差があるので、韓国の協会次第ですけど、渡加してスケートカナダ出ればいいんじゃない、と思います。ジェイソンブラウン選手はアメリカにいるか、カナダにいるか。

女子がさらに混沌としてる感じです。確実な上位選手としては、オーサー先生のところにいるカナダ人であるデールマン選手くらいでしょうか。ミスコンに出るくらい元気なようですし、全盛期のような滑りができるかはわからないまでも、スケートカナダにはきっと出てくる意志はあるはず。ただ、昨シーズンの成績が良くないので、枠が回ってこない可能性はあったりしますけれど

オーサー先生のところに行く、と明言した紀平選手は、7月終わりにはスイスにいたことは確かなのですが、そのあとどう動くか? 紀平選手は、まだ、全日本免除で代表と言い切って誰も文句言わない、というところまでの実績は積み上げ切れていないのが難しいところです。全日本はまだ一勝だけで、世界選手権の表彰台もない、となると、特別扱いはまだ仕切れない感じです。

宮原知子選手はもうカナダにいますかね? ブログを見る限りではトロントにいるはず。ただ、宮原選手、昨シーズンの全日本で表彰台に乗れませんでした。なので、全日本のシード権がないのですが、西日本選手権とスケートカナダは日程丸被りなので、グランプリシリーズに出る選手は、日程が前後一週間で被ったら予選免除、の条項で全日本に出られます。なので、予選問題はなくスケートカナダにそのまま出場可能。あとは全日本に出るための帰国をどうクリアするかです。

メドベージェワ選手の動きも大きな影響があります。ロシアにいて激烈な競争に身を投じるか、カナダに来るか。紀平選手が来なければ、ファイナル進出もメドベージェワ-宮原、切符二枚でほぼ確定、とかなりそうなものですが、紀平選手が来たときには一気にレベルが上がります。まあ、今シーズンはファイナルがどうのこうのと考えることにあんまり意味がなさそうですけど。そんなことを考えるのではなくて、やはりロシア-カナダの行って戻ってをどうするか問題は重いです

 

さて、残るは日本。NHK杯。男子は羽生選手がどうするかですが、カナダへ行った場合は羽生宇野二枚看板なし、ということになります。そうしたら、優勝候補は鍵山佐藤シニアデビュー組二人、ということになるでしょうか。佐藤選手は2月にババリアンオープンで国際大会シニアデビューしています。今回グランプリシリーズが、ミニマムスコアカウントに含めない、と出ていたので、このババリアンオープンがなかったら、四大陸や世界選手権のミニマムポイントが無い状態で全日本を迎えることになるところでした。男子は、日本が練習拠点の海外選手って誰かいましたかね? ヴィンセントゾー選手は、さすがに今日本には来てないでしょうし。韓国から誰か来ていたかもしれませんが、トップ選手はいないでしょうか

女子は紀平選手がどうするか。カナダに渡るあるいはスイスに留まる、とすると、やはり紀平宮原二枚看板なし、となります。そうなると優勝候補は坂本選手、あるいは樋口選手? となりそうなところですが、昨シーズン実績から考えると、実はユヨン選手だったりします。

まあ、韓国に戻っていて、こんな情勢なので濱田先生のところに戻ってこない、という線もありますけれど

韓国勢はどうするんでしょう? 女子の韓国は200点ランカーが何人もいます。この選手が今シーズンのグランプリシリーズをどう考えるか? 優勝するには中国に乗り込むというのが一番いいんでしょうけれど、入出国の甘さ厳しさ考えた時、中国と日本で二択なら日本を選ぶ方が容易でしょうか。そうなった場合、NHK杯は日韓戦(日本はエース抜き)なんてことになるのかもしれません。

可能性としては、ユヨン選手vs日本勢、日本vs韓国、あとは韓国勢も誰も来なくてプチ全日本選手権、というコースもありそうです。そうなった場合、選手の選出はどうなるでしょう?

まず、グランプリシリーズのミニマムスコアの問題があります。昨シーズンの全日本の上位の選手では、新田谷凜選手がこれをたぶん持っていません。昨シーズンは国際大会出場無し。二シーズン前にチャレンジャーシリーズに出ているのですが、そのスコアが133.86でした。通常、グランプリシリーズのミニマムスコアは、前のシーズンの世界選手権の優勝スコアの五分の三、とされていて、昨シーズンは142.50に設定されていました。同じスコアをスライドで今シーズン使うなら、新田谷選手はこれを持っていないことになります。

また、全日本9位の永井優香選手など、全日本上位選手で、近年、国際試合に出ていない選手は何人もいて、そのあたりの選手もミニマムスコアがありません。

さらに、ジュニア勢をどう考えるか? というのがあります。ジュニアグランプリシリーズに出場した選手は同じシーズンにシニアのグランプリシリーズに出ることは出来ません。しかし今シーズンは、ジュニアのグランプリシリーズへの派遣がない。そうなると、年齢さえ足りていればシニアのグランプリシリーズに出ることができます。全日本10位の吉岡詩歌選手、13位の河辺愛菜選手あたりをどうするか? 問題は、NHK杯の前の週に全日本ジュニアがある、というのもあるわけです。世界ジュニアの選考会である全日本ジュニアなので、免除、というわけにはいきません。免除も何も、その試合が目標です、という話なわけで。さすがにジュニアで、全日本ジュニア免除で世界ジュニア代表ってわけにはいかないでしょう。先に全日本ジュニアが来るので、調整無視でNHK杯も、という手もなくはないですが、どうなるか

昨シーズンジュニアグランプリシリーズに出ていて、ミニマムスコアを持っている選手を全日本ジュニア優先でNHK杯に出場させない、となると、シニアでミニマムスコアを持っている選手だけでは、おそらく12人に足りません。これは男子も同様です。その辺、どうするんでしょう? 韓国から選手が来れば12人に足りますが、日本勢だけだとおそらく足りない。足りなくても10人くらいでプチ全日本選手権(優勝経験者二人抜き)、にするのか

こんな形ですが、永井優香選手の国際大会復帰とか、新田谷凜選手、あるいは竹野比奈選手のグランプリ出場とか、見てみたい気もするんですけれど、どうなりますかねえ。

ついでに言うと、ペアとアイスダンス、成り立つんでしょうか・・・。他の国の大会は、あんまりそこの心配ないんですけど、日本で、他国から選手が来られないとなると、この二種目、大会自体が成り立つのかどうか。数少ない日本選手も、この二競技は練習拠点が海外である率が高いですし。大丈夫かなあ・・・。

 

 

全体として、グランプリシリーズとしてのミニマムスコアをどうするか? 日本勢で海外に練習拠点があり、海外のグランプリシリーズに出るような選手の地方大会の扱いをどうするか? そして、やはり、各国への出入国。大会開催国への、自国への、練習拠点への出入国がどうなるか。その辺が問題でしょうか

 

こんな状況ですが、見どころはいろいろありそうです

10月11月、どんな世界になっているかわかりませんが、これはこれで、楽しみにしたいと思います

 

地方大会 お金取ります?

前回、スケート連盟お金持ちだし、フィギュアスケート全日本選手権は興業として成り立っているのに、賞金なしで選手からエントリーフィー取るの??? というようなことを書きました

 

今回は、じゃあ、地方大会は、どれくらいのエントリー費が生じているのだろう? というのを見てみます。

全日本選手権は一人15,000円(カップル競技も1人15,000円なので、各カップル30,000円計算)でした。この金額は、地方大会でも同じです。

以下、2019年の実績を計算しました。

 

全日本選手権

男子31 女子29 ペア1組 アイスダンス4組

70人 × 15,000円 = 105万円

 

全日本ジュニア

男子29 女子30 アイスダンス2組

63人 ×15,000円 = 94.5万円

 

東日本+西日本

男子94 女子118 アイスダンス5組 ペア1組

224人 × 15,000円 = 336万円

 

 

地方大会

男子103 女子313  ノービスは数えていない

416 × 15,000円 = 624万円

 

全日本選手権およびそれにつながる地方大会(全日本ジュニア含む)において、合計すると、

 

105+94.5+336+624 = 1,159.5万円

 

1,000万円を超えるエントリー代が発生しています。

今回はノービスはカウント外としました。ノービスを入れた場合はさらに金額は増えて、全体で1,500万円ほどにまでなるはずです

 

地方大会も、主催は日本スケート連盟です。主管はそれぞれ地方の連盟が担当しています。

各大会の入場料は、有料/無料 どちらもありますが、地方大会は無料の方が多いでしょうか。全日本ジュニアは有料。西日本選手権は有料だけど東日本選手権は無料だったり、東日本無料なのにその予選相当の東京選手権は有料だったり、さまざまです。

ただ、高くても3,000円 全日本と比べると、大きな価格差はあります。全日本ジュニアなんかはそれなりの客数いるように見えますし、ジュニアグランプリファイナル? とか言われたりもした一時期の西日本ジュニア、横井ゆは菜、紀平梨花、白岩優奈、坂本花織、山下真瑚、本田真凜のフリー最終グループ、なんて入場料いくらの価値がある? みたいな試合も時にはありますが、基本的には全日本と違って、収支としてはマイナスでしょう。

 

そう考えれば、受益者負担ということで選手がエントリー代を払うのはわからないではないし、妥当は妥当だと思います

ただ、勝ち上がっていくと、大会出場料だけで結構な金額がかかります。

ジュニアで地方大会から全日本ジュニアまで勝ち上がり、さらに全日本の出場権まで得ると、4試合あるので6万円かかります。

本田一家とか結構すごいです

ジュニアの二人は理論上最大4試合、シニアの二人もブロック大会から出ると3試合あります。2×4×15,000+2×3×15,000=21万円。最大でこれだけかかります。理論値ですけど。

昨シーズン、姉妹で全日本にまで進んだ竹野姉妹は、実際に二人で9万円かかっているはずです。横井家も、そろそろゆは菜選手はブロック大会あたりは出ないようになってきていますが、ジュニアのきな結選手含め、下から全部勝ちあがっていくとすると10.5万円かかります。

あの本田家が、21万円に困ってるとは思いません。でも、21万円って、結構な金額であるのも確かです

横井家はどうだろう? 強化指定Aに入ってますし、グランプリシリーズで賞金を稼ぐ権利はありますが、明確なスポンサーはまだついていなかったはずです。この辺の、スポンサーは付かないけど上位にいて世界を転戦するクラス、というのが一番金銭的につらい、なんてことも聞いたりします

 

この辺の、エントリー費用というのはどうなんでしょう? 妥当なものでしょうか?

 

ある程度妥当なような気はするんですよね

実際、地方大会は収支はマイナスなはずですから

そして、エントリー費用として集まる1,000万円ないしは1,500万円くらいの金額は、これくらいまとまれば上位選手の強化費として、何人分かになる

一方で、それはそれとして、普及という面から見て、地方大会に出てくるレベル、バッジテスト6級あるいは7級という、トップを目指す入り口はクリアした選手たちには、全日本につながる大会のエントリーは無料にする、ということを考えるのもありかと思ったりします

 

まあ、フィギュアってそもそもお金かかるんで、高々15,000円の試合エントリー費用がなくなったからって、どれだけ助かるか? というと、大した影響はないとは思うんです

それでも、今回はコロナで懐が痛んでいる人がそれなりにいる

一方で、連盟は、元々結構お金を持っている中で、今回、特に懐は目立って痛んではまだいないはずなんですよね。

なので、今年、あるいは来年くらいまで、限定的にでも、エントリー費用をゼロにする、というようなことがあってもいいのかな、と

そんなことを思ったりします

 

 

 

 

 

全日本選手権 お金取ります?

入場料の話じゃないです。

 

前回、スケート連盟の財務状態は、だいぶ余力がありますよ、コロナコロナ世の中言ってますけど、スケート連盟の財務状態は、基本的に問題ないはずです、というお話をしました。

 

ただ、選手たちの財務状態は、どうなんでしょうか?

この辺は、正直なところよくわかりません

トップの方の選手にはスポンサーというのが割とついていますが、そのあたりとの契約は、基本的にはコロナ関係なく維持されるのではないか、と思いますが、中には、更新のタイミングで切られちゃうようなこともあるかもしれないでしょうか

はっきりと出ているのは、この春から夏のアイスショーはほぼ全滅、というのがあると思います。このあたりは、中堅選手にとって、ある程度の収入源となっている部分もあったでしょうから、いくらか痛いかもしれません

あとは、各選手のご家庭がどうか?

こんなの、わかりようがないですけど、中には、多少傷んでいる人もいるのではないかとも思われます

 

さて、ここからが本題

スケート連盟主催で、毎年、全日本選手権が開かれています

まだ今年の要項は出ていないので、今年も同じなのかは確定していませんが、昨年以前はずっと変わらないでいるものがありました。

各選手は、出場するために必要なものがあります

15,000円です

各選手なので、ペアやアイスダンスは、それぞれ15,000円で、一組30,000円が必要です。

 

まあ、わかるんですけど

受益者負担、ということで、大会に出る選手が出場料を払う

その辺のマラソン大会とかでもそうですよね。大会の運営にはお金がかかりますので、その試合に出たい、と言う人がお金を出し合ってその運営費をいくらか賄う、というのは、自然と言えば自然な考え方です

 

全日本選手権と名の付く大会で、選手から参加料を徴収する競技というのは結構あります

例えば、卓球なんかも参加料を取っています。卓球は、出場選手数も半端ないので、大会運営においてそういった選手たちを管理するのも大変、という部分もたぶんありますが、一方で、賞金が出ます。全体から参加料を取りつつ、成績優秀者には賞金が出る、というのはある種バランスが取れているかと思います。

体操協会なんかも、天皇杯では1選手1万円の参加料を取っています。女子選手のみ、JASRAC負担金500円、というのは床競技の音楽を指すんでしょうけど、これはどうにかならんのか? という気もしますが、ともかく、参加料を取っています

まあ、ただ、体操協会は、すごく潤っている、というような協会でもないですしね。結果はこれまでだいぶ出してきた競技ではあるんですけれど。

 

それと比べると、スケート連盟というのは潤っている連盟です。

そして、この、全日本選手権、というイベントは、明らかに興業として成り立っています

主に入場料収入を元にして、毎年黒字を出しています。2018年大会はおおよそ1億円の黒字でした。また、その外数(大会毎ではなくシーズン契約だと思われるため)として、放映権料収入が入ります。

 

という催しにおいて、選手たちから参加料取りますか? というお話です。

 

大した額ではないです。15,000円。羽生選手や紀平選手が、15,000円に困っているなんてことはないでしょう。とはいえ、その二人に向かって、試合に出たいならお金出しなさい、というのも違和感ありますけれど

もちろん、15,000円に相当する見返りが、トップ選手だけでなく、ショート落ちするような位置の選手にもあることはわからないではないです。会場は設営しないといけませんし、バンケットのメニューもそれなりの金額するでしょう

なので、対価として意味があることは否定はしません

ただ、選手たちを支援していく、というのが一つの大きな目的の団体なので、財政面に余裕があるなら、参加料という形で選手からお金を取らなくてもよいのではないかな、と思います

 

ただ、難しいのは、同じスケート連盟の中の他の競技との兼ね合いでしょうか

スピードスケート、ショートトラックにも、当然、全日本選手権に相当する大会はあり、それらは基本1名10,000円となっています(1種目5,000円のパターンもある)。

まあ、その辺は、フィギュアだけは明らかに興業として成り立っている、というあたりの理由で整合性とるんですかね

 

ちなみに、スケート連盟と比べて、各段に財政面で貧弱なカーリングは、全日本選手権の参加料は無料です。「全国農業協同組合連合会の協賛により無料とする。」 と大会要項に明記されています。

そんなんだから競技力の割に財政が貧弱で強化にお金費やせないんだよ、と思わないこともないですが、強化の対象となるチーム自体からお金集めても仕方ない、という意味では妥当な対応と思います

 

トップ選手が15,000円に困っているとは思っていません。

中堅選手も、15,000円くらいじゃ、逆に、大した足しにはならないでしょう

それでも、連盟というものの理念として、財政に余裕があり、興業として成立して大きな黒字が出ている競技会において、選手から参加料を取るのはいかがなものか、とどうしても感じてしまいます

 

特に今年は、コロナウイルスというものが蔓延し、各地で、経済的に困窮しているひとがいます

選手たちのご家庭でも、そういった部分がいくらかあってもおかしくはありません

 

全日本選手権、というものにおいて、選手から参加料を徴収するのを、やめていくいい機会なのではないかと思います

 

 

 

 

日本スケート連盟の財務余力

前回、相撲協会の財務余力を見ました。

相撲協会はかなりの金持ち団体ですが、協会員の給料という固定費が大きいため、本場所という興業が行えずに収入が途絶えるとちょっと苦しい。ただ、持ってる金額が桁違いなのでまだ大丈夫、というものでした。

 

さて、では、割とお金持ってそうなスケート連盟はどうでしょう?

ちょっとその辺を今回は見ていきます。

 

スケート連盟の最新の決算は2019年6月期のものです。もうすぐ2020年6月期が終わりますが、これ、決算書が出るのは9月の終わりころになるので、まだ全然見えてきません。

2019年6月期の決算については以前に見ました。

18年6月期に続いて、2年連続で5億円レベルの大きな黒字があり、純資産に相当する正味財産が31.8億円まで増えています、というような状態でした。

 

資産合計

3,533,156,234

負債合計

351,535,352

正味財産合計

3,181,620,882

 

負債が3.5億円ほどに対して資産が35億円と10倍水準であります。差し引きで正味財産は31.8億円ほど。かなり大きな資産を持っています。

 

流動資産合計

1,471,876,630

固定資産合計

2,061,279,604

資産合計

3,533,156,234

 

その資産の持ち方ですが、スケート連盟も、それなりに固定資産扱いのものがあります。一方、すぐに現金のように使える資産である流動資産も14.7億円あります。それなりの金額。これでどれだけ暮らせるか?

 

スケート連盟の年間の支出はどれくらいあるのでしょう? 2019年6月期は40.2億円の経常費用がかかっていました。スケート連盟の支出は年ごとに大きく変わります。2019年6月期は結構特殊な年。世界フィギュアを開催したシーズンでした。世界フィギュアに賭けた特別事業費が12.85億円あります。それを除くと27億円台です。

 

実は、連盟自体の本当の固定費は、年間3億円程度しかありません。なので、14.7億円の流動資産があれば理論上5年近くは暮らせます。前回見た相撲協会は、金持ちだけどそんなに5年も何もしなくても暮らせる、というようなことはありませんでした。その差は、相撲協会は協会員という名前の関取たち含め、多くの人達に給料を払わないといけないため、そこが固定費として重くのしかかっていました。一方、スケート連盟にとって、選手たちは給与を払う対象ではありません。したがって、選手たちを支援する費用は固定費にはなりえないわけです。なので、固定費が軽く、連盟自体はちょっと世の中止まっても、いきなりつぶれるというようなことはありません。

相撲協会とスケート連盟では、ビジネスモデルがだいぶ違う、ということが言えます。公益法人に向かって、ビジネスと言ってしまうと怒られるなら、収益モデル、と言い換えましょうか。

 

スケート連盟の支出の中で、19年6月期決算において最もお金がかかっていたのは、特別事業費という名の大会運営費用でした。

 

2019年スケート連盟の支出額比率

 

支出の半分が特別事業費 = 大会運営費です。ここでいう大会とは、NHK杯フィギュア、全日本フィギュア、世界フィギュア、スピードスケートワールドカップ、の4試合でした。実際にはこの全体の支出の半分である大会運営費の中の6割が世界フィギュアの運営費です。

 

何が言いたいかというと、準備もしていない段階で大会が中止になっても、連盟の懐は痛まないけれど、準備をしてから中止になると懐が結構痛む、という話です。大会運営費は固定費扱いではないですが、大会の準備をしてしまえば実際に発生する支出ですので、結構痛い、ということになります。

例えば、18年のNHK杯フィギュアで懸かった費用は3.91億円でした。大会がもし直前で中止になれば、賞金などが発生しないことでわずかに出費が減りはしますが、9割以上はそのまま費用が掛かったうえで、メインの収入源となる入場料を得られないので、大きな赤字を抱えることになります。

 

ただ、それでも、15億円近い流動資産を持つスケート連盟としては、痛いけれど支えきることは問題なくできる、という水準ではあります。

 

固定費、大会運営費、以外で毎年何にお金が使われているのか?

それは、大事な大事な、選手の強化費です。

これは、上記の円グラフでは、強化費と書かれた項目だけでなく、一般事業費からも割り当てられています。

 

強化派遣費推移

 

決算書の中に、判別しにくい項目もあるので、概算ですが、各年の強化・派遣費はこのグラフのようになっています。2019は2018年7月から2019年6月までのシーズンの意味です。

ショートトラックが2016-17シーズンから初めて数字が入っている形になっていますが、それ以前はスピードスケートとショートトラックの区別が決算書から読み取れませんでした。

近年は毎シーズン7億円ほどの強化・派遣費が捻出されています。これを次のシーズンも普通にねん出することができるか?

 

結論から言えば、できます。間違いなくできます。

 

万が一、収入が途絶えた場合、上記の流動資産からだけだと年間7億円を支出するのは、多少の不安がある水準です(できなくはないけど)。ただ、資産はもう一つありました。固定資産です。

 

固定資産は20.6億円あると上記の表に出しました。このうちの19.0億円は特定資産という、特定の目的のためにもっている、と宣言されている資産になっています。

特定の目的とは何か?

 

退職給付引当預金 みずほ銀行定期預金 91,351,000
特別基金引当預金 三菱UFJ信託銀行定期預金 10,000,000
積立引当預金(フィギュア関係) 三菱東京UFJ銀行定期預金 20,000,000
積立引当預金(強化関係) みずほ銀行定期預金 1,776,646,213

これは決算書の財産目録に書いてありました。17.77億円相当がみずほ銀行に定期預金として預けられていて、これは、強化関係のものである、とありました。

つまり、固定資産の中に、実質的にすぐ現金化できる強化に使用できる資産が17.77億円ある、ということです。

来シーズンも、その次のシーズンも、収入がちょっとやそっと途絶えても、昨シーズン並みの強化費の捻出は問題なくできます。

 

今日のお話は、簡単にまとめてしまうと

スケート連盟はコロナでNHK杯や全日本のような主催大会が中止になると、収益が損なわれるけれど、十分に今の段階でお金持ってるから、1年2年くらいなら、今までと変わらず選手の強化費は出せるよ、というお話でした