宇宙ビジネスの衝撃~21世紀の黄金をめぐる新時代のゴールドラッシュ 大貫美鈴
ダイヤモンド社 264ページ
宇宙へ行きたい
とは、あまり思わない
ただ、宇宙は開拓されるべき、だとは思う
宇宙で暮らす、という選択肢が普通に存在する未来が来てほしい
地球外のどこかに拠点が存在する
太陽系内に広がっていく
アルファケンタウリの近くの惑星に人が住めるかはわからないけれど、やがて太陽系外へも広がっていき・・・
それが何百年先か何千年先かはわからないけれど、そういった未来を想像することもある
これはそこまでいくための何歩目だろうか
宇宙開拓がリターンの見込める民間のビジネスになってきた、というお話
出だしはやはりイーロンマスクに始まり、グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン、といったGAFAの宇宙ビジネスの話へと進んでいく
後半は、宇宙旅行であるとか、月や火星に人が住む、といった古くから宇宙開拓といえばここにつながる、と一般の人が思っているような俗っぽい話も織り交ぜられている
全体的、浅く広い、という感じの取り上げられ方であったように思われる
カタログ的に、こんな企業がこんなことをやっていて、こんな市場があって、という話が並び、宇宙旅行なんかに関しても、こんな手段があってそれだといくらくらい、という話や、旅行に付随するあれこれ、宇宙服がどう、宇宙食がどう、みたいな話に広がる
すべて浅く広く、カタログ的に
ざっといろいろなことを知っておく、というかある程度把握しておくのにはよいと思う
GAFAが何やってるのか、なんてことが浅く載ってますし
ただ、一つ一つの深さはないです
そういう書籍ではありません
宇宙への浅い興味がある人への入門編、といったところ
ただ、宇宙にかかわる分野にすでにいる人にとっても、自分が直接かかわっているところ以外のことをざっと知っておくにはいいのかもしれません
こういうもので浅くでも触れておくと、実際に情報に接した時の馴染みの速さが違いますし
私個人の感覚としては、軌道エレベーターという発想、技術、がもう少し拡がってほしいというか、世界的に取り組まれているのかな、と思っていたのが、案外そうでもなさそうな記述になっているのが少し残念でした
軌道エレベーターとは、地球上空の静止軌道と地球上をつなぐエレベータを言います
その長さは静止軌道までだけ考えると36,000kmですが、実際には遠心力とのバランスを取るために、静止軌道のさらに先まで伸ばすことが求められ、その総延長は10万kmにもおよぶといわれているものです
俗には宇宙エレベーターとも言われます
ロケットで宇宙を往復する発想と比べると、この軌道エレベーター構想が実現すると、それこそ世界観がひっくり返るくらいに地球-宇宙のアクセスが一般人でも容易になり、その後の開拓が一気に進むので、宇宙開拓のキーになるインフラだと思っているのですが、まだ世界的には荒唐無稽、という位置づけになってしまうのかもしれません
宇宙開拓は、夢、としてだけでは限界があります
人工衛星がビジネスとして成り立つことでその打ち上げが盛んにおこなわれているように、宇宙開拓そのものもビジネスとして成り立つことで、その開拓が加速するはず
そういった意味で、国家の威信のため税金を使って、ではなく、また、大富豪が自分の夢のための消費として、でもなく、民間がビジネスとして行っている、という現実は、宇宙開拓へ向けて明るい話であると思います
そのあたりのことを、浅く広く、それはつまり、軽く読みやすく、という意味も含みますが、そういった形で読むことができる書籍です
軌道エレベーター欲しいなあ