全日本選手権18男子シングル得点考察1

男子シングルは、宇野選手がけがをするという想定外が起きたりしていましたが、大枠ではある種予想の範囲内に収まっていたような気がします

 

というわけで、今回は男子シングル上位選手の得点の取り方を見ていきます

男子シングルで総合6位までに入った選手についてです

まずはショートプログラム

 

 

ジャンプ基礎点

ジャンプGOE

スピン基礎点

スピンGOE

ステップ基礎点

ステップGOE

演技構成点

減点

宇野昌磨

30.60

8.82

9.30

2.96

3.90

1.23

45.25

0

高橋大輔

23.99

3.42

8.80

2.31

3.30

1.56

45.14

0

田中刑事

28.00

-2.54

9.70

1.68

3.30

0.99

39.19

-1

友野一希

25.58

-1.82

7.75

0.77

3.30

0.75

37.76

-1

島田高志郎

24.41

4.52

9.30

1.84

3.30

0.85

36.24

0

鍵山優真

24.41

2.18

9.70

1.39

2.60

0.63

33.60

0

 

世界選手権の出場枠を争う田中選手、友野選手、二名が転倒して出遅れるという、ありそうだったけれど、フィギュアスケート界としてはあまりあってほしくなかった展開でした。他の上位選手は転倒なし

 

髙橋選手はジャンプの基礎点は一番低くなっています。他の上位選手は、四回転があるか、無い場合はコンビネーションがボーナスタイムに入っていたのに対し、高橋選手は四回転なしで、1.1倍ボーナスは単独のルッツだったためです。

ジャンプのGOEは、転倒のあった田中友野両選手はマイナス。宇野選手のトップは当然として、ジュニアのエース格島田選手がそれに続く加点を得ていました。

 

スピンは田中選手と、中学生の鍵山選手が基礎点トップ。スピンレベル4を揃えたという、ちょっと普通の中学生とは違う点の稼ぎ方でした。逆に、世界選手権を狙っていた友野選手はスピンの基礎点が上位選手中最下位なうえ、GOEでも最下位です。ジャンプで転倒、スピンもレベルを取れず加点も取れずでは、世界選手権は遠のきます

 

ステップはレベル4が取れたのが宇野選手だけ。ただ、加点は、レベル3ながら高橋選手が9人中6人のジャッジがGOE満点をつけていて、一番高いものになりました。友野選手はここでも、中学生の鍵山選手よりはよかったものの、他の選手と比べて低くなっています。

 

演技構成点は、宇野高橋両選手が抜けていて、中学生の鍵山選手はだいぶ低いという、ありがちな結果でした

 

ジャンプ、スピン、ステップ、演技構成点、それぞれ区分けしても、どれも宇野選手が一位になる、ということもまた見て取れます。宇野選手の他の選手との実力差は圧倒的でした

 

 

 

ジャンプ基礎点

ジャンプGOE

スピン基礎点

スピンGOE

ステップ基礎点

ステップGOE

演技構成点

減点

宇野昌磨

64.97

8.01

10.20

3.71

6.90

3.33

89.92

0

高橋大輔

43.34

-1.31

8.80

1.62

6.90

4.25

88.50

-1

田中刑事

49.01

6.97

9.70

1.79

6.30

2.70

80.66

0

友野一希

60.57

-1.07

9.50

1.28

5.60

2.35

77.14

-1

島田高志郎

40.44

4.05

8.80

1.94

5.60

1.99

76.50

0

鍵山優真

53.35

3.43

9.70

1.60

5.60

0.47

67.70

0

 

さて、次はフリーを見てみます

 

ジャンプは4回転を試みて2本とも2回転になった島田選手が基礎点から低めです。同じように四回転に試みるも3回転になった高橋選手も基礎点があまり得られていません。田中選手も四回転2本のうち一本が2回転になって基礎点が伸びず。一方、ノーミスとはいかないまでもちゃんと全部回転を回りきるジャンプをした鍵山選手は、中学生ながらそういった上位選手よりもジャンプの基礎点という面では上に行きました。

 

ジャンプのGOEはトリプルアクセル以外の5つのジャンプで全部マイナスが付いた高橋選手はトータルでもマイナス。友野選手も転倒が響いてマイナスです。友野選手はショートフリー共に、ジャンプのGOE合計はマイナスになってしまいました。

 

スピンは基礎点GOE共に宇野選手がトップですが、中学生の鍵山選手が三つレベル4を揃えて基礎点ではそれに続いています。鍵山選手は、ショートフリー、合計6つのスピンですべてレベル4でした。

友野選手が基礎点こそそれなりに稼いでいますが、GOEは上位選手中一番下でした。

 

ステップはレベル4だったのが宇野選手と高橋選手の二人だけ。高橋選手はステップでは9人中7人、コレオには9人中6人のジャッジがGOE満点を出していて、加点ではトップでした。宇野選手は、ステップで3人のジャッジが満点を出しています。

一方、ジュニアの二人と友野選手はステップでレベル2でした。友野選手は、ジャンプで転倒視点が伸ばせず、スピンも加点が取れず、ステップでレベルを取れずでは、世界選手権は遠のきます

 

演技構成点の順番は、そのまま総合得点の順番に結果的になりました。

 

 

ジャンプ1本目

ジャンプボーナス

コンビネーション分

ジャンプGOE

スピン

ステップ+コレオ

演技構成点

減点

宇野昌磨

55.20

2.67

7.10

8.01

13.91

10.23

89.92

0

高橋大輔

36.81

1.50

5.03

-1.31

10.42

11.15

88.50

-1

田中刑事

43.10

1.61

4.30

6.97

11.49

9.00

80.66

0

友野一希

49.08

2.24

9.25

-1.07

10.78

7.95

77.14

-1

島田高志郎

32.60

1.74

6.10

4.05

10.74

7.59

76.50

0

鍵山優真

40.70

2.35

10.30

3.43

11.30

6.07

67.70

0

 

 

切り口を変えて、ジャンプの中身を区分けします

ジャンプの1本目の部分できちんと基礎点が取れているのは宇野選手と友野選手。ぬけが多かった島田選手と高橋選手は、7本のジャンプで40点に満たない基礎点になっています。1.1倍ボーナスタイムのボーナス分で得た点数は、一番上の宇野選手と一番下の高橋選手の間でも1.17点しか差がなく、GOEでどれだけ稼ぐかの方が圧倒的に重要、というのが見て取れます。

コンビネーション部分、すなわちコンビネーションジャンプの2本目以降のジャンプの基礎点が一番大きかったのは鍵山選手になりました。セカンド3Tや3連続で3Sにつなぐなど、しっかりとジャンプが飛べていた結果です。

 

スピンでは高橋選手が上位選手中最下位。ちょっとそこまで手が回らなかった、というような印象でした。

一方、ステップでは高橋選手がトップです。ここが高橋選手の売りなので、ここだけは譲れなかったという感じでしょうか。

 

 

最後に、ショートとフリーを足し合わせてみます

 

 

ジャンプ

スピン

ステップ+コレオ

演技構成点

減点

宇野昌磨

112.40

26.17

15.36

135.17

0

高橋大輔

69.44

21.53

16.01

133.64

-1

田中刑事

81.44

22.87

13.29

119.85

-1

友野一希

83.26

19.30

12.00

114.90

-2

島田高志郎

73.42

21.88

11.74

112.74

0

鍵山優真

83.37

22.39

9.30

101.30

0

 

ジャンプ、スピン、演技構成点は宇野選手がトップ。ステップだけは高橋選手がトップでした。ただ、高橋選手はジャンプの点が伸びていません。

田中選手と友野選手を比べると、ジャンプは友野選手が上に来ていますが、スピンステップと演技構成点では田中選手が上です。

島田選手はジャンプ、スピンで鍵山選手に劣っていたのですが、ステップと演技構成点で上回って、なんとかジュニアのトップに立って世界ジュニアの切符をつかみました。

 

 

ジャンプ基礎点

ジャンプGOE

スピン基礎点

スピンGOE

ステップ基礎点

ステップGOE

演技構成点

減点

宇野昌磨

95.57

16.83

19.50

6.67

10.80

4.56

135.17

0

高橋大輔

67.33

2.11

17.60

3.93

10.20

5.81

133.64

-1

田中刑事

77.01

4.43

19.40

3.47

9.60

3.69

119.85

-1

友野一希

86.15

-2.89

17.25

2.05

8.90

3.10

114.90

-2

島田高志郎

64.85

8.57

18.10

3.78

8.90

2.84

112.74

0

鍵山優真

77.76

5.61

19.40

2.99

8.20

1.10

101.30

0

 

基礎点とGOEを分けてみると、友野選手はジャンプのGOEがマイナスですし、スピンのGOEは上位選手中一番低くなっています。基礎点はそれなりに出ていたけれど、加点を得ることができず表彰台に乗れなかった、という構図です

髙橋選手は、ジャンプこそ基礎点もGOEも低いですが、スピンやステップは、レベル4を揃えきることは出来ないながら、加点をかなり多く得て、さらに演技構成点で稼ぐことで2位に残ったという構図です。

鍵山選手はジャンプとスピンに関しては宇野選手を除くシニアの上位選手と遜色ない点が出ています。ステップと演技構成点を得ることが過大なようです

宇野選手は、ステップのGOEだけ高橋選手に負けましたが、他は基礎点、GOE、演技構成点、すべてトップ。他の選手との実力差がはっきりと見えます

 

 

ジャンプ1本目

ジャンプボーナス

コンビネーション分

ジャンプGOE

スピン

ステップ+コレオ

演技構成点

減点

宇野昌磨

83.70

3.47

8.40

16.83

26.17

15.36

135.17

0

高橋大輔

56.01

2.09

9.23

2.11

21.53

16.01

133.64

-1

田中刑事

66.10

2.41

8.50

4.43

22.87

13.29

119.85

-1

友野一希

69.66

3.04

13.45

-2.89

19.30

12.00

114.90

-2

島田高志郎

51.80

2.75

10.30

8.57

21.88

11.74

112.74

0

鍵山優真

59.90

3.36

14.50

5.61

22.39

9.30

101.30

0

 

ジャンプの構成を細かく区分けしてみると、4回転をしっかり3本入れた宇野選手が1本目のジャンプで大きな差をつけているのが分かります。ただ、コンビネーションの二つ目以降のジャンプは、今回は無理をしなかったという要素が強いのかと思いますが、上位選手の中で一番低い基礎点になっていました。逆に、今できる構成をしっかり全部こなした、という形の鍵山選手はコンビネーション部分の点数が最大です

 

 

この辺を、それぞれの差分(6人の中で一番点が低い人との差の合計)で表すとこんな感じになりました

 

f:id:yumegenjitsu:20181229000206j:plain

 

同じものを表にすると

 

 

ジャンプ1本目

ジャンプボーナス

コンビネーション分

ジャンプGOE

スピン

ステップ+コレオ

演技構成点

減点

宇野昌磨

31.9

1.38

0

19.72

6.87

6.06

33.87

2

高橋大輔

4.21

0

0.83

5

2.23

6.71

32.34

1

田中刑事

14.3

0.32

0.1

7.32

3.57

3.99

18.55

1

友野一希

17.86

0.95

5.05

0

0

2.7

13.6

0

島田高志郎

0

0.66

1.9

11.46

2.58

2.44

11.44

2

鍵山優真

8.1

1.27

6.1

8.5

3.09

0

0

2

 

それぞれの得意不得意が良く見えてきます

やっぱりスピンやステップの差よりもジャンプの差が大きく、特に一本目のジャンプの差、つまりそれは4回転の本数の差、ということになり、そこにどれだけGOEを得られるか、そして演技構成点をどれだけ得るか。

まあ、わかってますよそんなこと、という部分ではありますが、大きく差が付くのはそこなんだな、という感じでした。

女子は、スピンやステップできっちり点を取っていくところの差、というのが結構効いていますが、男子はそういうところまでいかず、ジャンプと演技の差で決まってしまうくらいの実力差が選手間にある、ということなようです

 

 

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